毎月のように、食の安全に関する報道がある。今回は、カビが生えた米を食用に転じたのである。表示に関する偽装など、かわいいものである。産地の違いなどそれ程の問題なのだろうかと思うが、マスコミは大騒ぎする。
こうして日本の食品は、産地や成分表示や添加物の表示に賞味期限などの表示など、大忙しである。スーパーでは、商品を手にとって裏の表示を丹念に見ている方を、このごろよく見かける。
これでは、交通事故が多発するために、たくさんの信号や駐車禁止や速度制限の表示で街を埋め尽くす状況と同じである。食品の本来の姿が見えなくなってしまっている。野菜などを、産地で食べて「自然の恵みを感じる」そうした、食品の元の形をどこかに捨ててきた気がする。
消費者から生産地までの距離が長くなったのである。その一つが、距離である。食料の重さに 距離を掛けたものが、フードマイレージである。日本は世界中で最もフードマイレージに高い国である。重い穀物をアメリカから輸入していることが大きく関係しているが、遠くから運んでくるためにCO2の排泄が高いことになる。
日本の食品が、消費者から遠くなっているのは距離だけではない。一つは時間的に長くなっている。貯蔵の技術や保存のシステムが高度になり、収穫や製造からかなり時間をおいて、消費者に届くようになった。消費者に旬を忘れさせることになった。
もう一つは、流通が長くなったことである。農産物が作られても、製造の段階で加工する工程が増えて長くなったのである。それに加えて、商品になった後の流通の工程が複雑になって、より多くの人の手を経ることになったのである。
これらのことをすべて解決する手段はないが、旬のものをできるだけ近くのものを食べるようにとすした「4里以内のものを食べる」とか「地産地消」あるいは「心土不二」などする、古人の教えを思い出すのである。
食べ物を、これだけ複雑で長い流通過程と複雑な工程にしたのは、食糧の海外依存率を高めたことの結果であるといえる。食品の安全に関する事件は今後も続くと思われる。