4 祈り
と始まり、息子の安全な帰港を祈るが、こう結ばれる。
この詩について、池澤はこんなことを書いている。
「西側から見ると」に私はつまずく。なぜ「西側」なのか。なぜ「池澤側」からではないのか。どうして「西側」から見ないといけないのか。
私はどの宗教も信じていないので、どう判断していいのかわからないが、カヴァフィスを、あるいはギリシアの母を、書かれていることを、「西側」から読み直すということが、どうしてもわからない。
池澤は、こうつづけている。
母親が祈ったのが、キリストだったらどうなるのだろうか。もしキリストだったら「冷酷」さは消えるのか。私は疑問に思う。池澤の注は、このことを説明していない。
私はキリスト教徒ではないから、もっと自分に引きつけて読む。自然(人間以外のもの)は非情である。人間がどう思うかを気にしない。母親が祈ろうが、嘆こうが、息子のいのちを奪うときは奪う。そして、非情であるとわかっていても、人間は「祈る」。
そして残酷なことを書いてしまうが、祈りは聞き入れられないからこそ、「祈る」という動詞(姿)が美しくなる。無意味さが、祈りを絶対的なものに変えてしまう。「共感」になるのだ。感情が共有されるのだ。
「西側から見ると」という限定が、「祈る」という動詞の美しさをゆがめてしまわないか、とも疑問に思う。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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海がその深みへ一人の水夫を連れ込んだ--
彼の母は何も知らずに聖母のところへ通い
と始まり、息子の安全な帰港を祈るが、こう結ばれる。
聖母は厳粛に悲しげにそれを聞きながらも、
知っている、彼女の待つ息子がもう決して戻らぬことを。
この詩について、池澤はこんなことを書いている。
神とキリスト教のほかに聖母や聖者たちまでが祈祷の対象になり、聖画(イコン)が重視される。東方教会は純正であると同時に、西側から見るとどことなく異教的でもある。
「西側から見ると」に私はつまずく。なぜ「西側」なのか。なぜ「池澤側」からではないのか。どうして「西側」から見ないといけないのか。
私はどの宗教も信じていないので、どう判断していいのかわからないが、カヴァフィスを、あるいはギリシアの母を、書かれていることを、「西側」から読み直すということが、どうしてもわからない。
池澤は、こうつづけている。
古代の神神は人間を贔屓にはしても愛しはしなかった。その冷酷のかすかな残照がこの聖母の画像にあるのではないか。
母親が祈ったのが、キリストだったらどうなるのだろうか。もしキリストだったら「冷酷」さは消えるのか。私は疑問に思う。池澤の注は、このことを説明していない。
私はキリスト教徒ではないから、もっと自分に引きつけて読む。自然(人間以外のもの)は非情である。人間がどう思うかを気にしない。母親が祈ろうが、嘆こうが、息子のいのちを奪うときは奪う。そして、非情であるとわかっていても、人間は「祈る」。
そして残酷なことを書いてしまうが、祈りは聞き入れられないからこそ、「祈る」という動詞(姿)が美しくなる。無意味さが、祈りを絶対的なものに変えてしまう。「共感」になるのだ。感情が共有されるのだ。
「西側から見ると」という限定が、「祈る」という動詞の美しさをゆがめてしまわないか、とも疑問に思う。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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