詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

池澤夏樹のカヴァフィス(151)

2019-05-19 11:19:17 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
151 古代ギリシャ=シリアの魔術師の処方を使って

美を愛するさる人物が言う--「何か方法はないか、
霊験ある薬草の成分などを蒸留して、
それも古代ギリシャ=シリアの魔術師の処方などを使って
たった一日でも(薬効は長くは続くまいから)、
あるいはせめて数時間でも、
わたしが二十三歳だった時の、
あの二十二歳の友人の、
美と愛を呼び戻せないものか。

 主眼は後半の「二十二歳の友人の、/美と愛を呼び戻せないものか」にあるのか。いや、「古代ギリシャ=シリアの魔術師の処方などを使って」の方だろうなあ。
二連目は一連目の要約と言いなおしだが、そこにまったく同じことばが出てくる。この不思議なリフレインマジック。意味よりも音楽が聞こえる。

古代ギリシャ=シリアの魔術師の処方を使って
蒸留した霊薬で過去へと遡り、
私たちが一緒に暮した
あの部屋へ戻れないものか」

そしてその音楽は、エキゾチックで、遠くへと思いを運ぶ。空間の遠さが、時間の遠さ。それを呼び寄せる音楽の近さが、官能そのものに揺らぎに感じられる。この酔いの中で、蒸留されるのは「霊薬」ではなく、「過去」そのものだ。

池澤の註釈。

ギリシャ文化圏にも魔法はあったが、それにシリアを加えることで神秘感は強まる。秘儀は東から来る。






 



カヴァフィス全詩
クリエーター情報なし
書肆山田


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