146 さあ、あなたはラケダイモンの王
池澤の註釈。
そのクライマックスは、後半にある。
「私らの力の及ぶ範囲」ということばが強い。ほんとうは、この強いことばこそが繰り返され、読者のこころに刻まれるべきものである。しかしカヴァフィスは、逆に、そのことばの対極にある「神々の手の中にある」を繰り返している。
この瞬間、人間が「神話」になる。
詩人はそう言うが、逆じゃないか、という「反論」を私のこころは叫ぶ。
この構造は、とてもおもしろい。
「共感」「同意」ではなく、「反論」のなかでつかみ取る真実。読者に真実をつかみとられるために、あえて逆を書く--ということをカヴァフィスが狙ったかどうかわからないが、私は、そう感じた。
「神々の手のなかにあるもの」など、どうでもいい。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
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池澤の註釈。
これは136「スパルタで」の母と息子の場面の続きである。
そのクライマックスは、後半にある。
威厳を取り戻したこの健気な女性は
クレオメノスに言った、「さあ、あなたはラケダイモンの王。
ここを出る時には、
涙もスパルタらしからぬふるまいも見せぬよう。
そこまでは私らの力の及ぶ範囲です。
その先のことは神々の手の中にあるとしても」
そう言って彼女は船の方へ、「神々の手の中にある」ものの方へ、歩み出した。
「私らの力の及ぶ範囲」ということばが強い。ほんとうは、この強いことばこそが繰り返され、読者のこころに刻まれるべきものである。しかしカヴァフィスは、逆に、そのことばの対極にある「神々の手の中にある」を繰り返している。
この瞬間、人間が「神話」になる。
詩人はそう言うが、逆じゃないか、という「反論」を私のこころは叫ぶ。
この構造は、とてもおもしろい。
「共感」「同意」ではなく、「反論」のなかでつかみ取る真実。読者に真実をつかみとられるために、あえて逆を書く--ということをカヴァフィスが狙ったかどうかわからないが、私は、そう感じた。
「神々の手のなかにあるもの」など、どうでもいい。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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