144 アレクサンドロス・イアナイオスとアレクサンドラ
前半部分に出てきたことばが最後にもう一度繰り返される。すこしだけ形を変えて。
「偉大」「名高き」「申し分ない」。こういうことばは「常套句」であり「散文的」でもある。けれど「常套句」であるからこそ、その響きには「安心感」がある。真新しい何かではなく、いつもこころに思い描いていたものという「親近感」と言いなおすこともできる。
「偉大」「名高き」「申し分ない」ものが「自分のもの」として感じられる、ということ。
カヴァフィスの書いているのは詩である。詩は、一種、特別な新しいものである。つまり「知らなかったもの」が目の前にあらわれたとき、詩の衝撃は強い。
しかし、カヴァフィスは、それを「自分のもの/知っているもの」に変換させて、詩として提出する。
そういう「特質」があらわれた作品だと思う。
この作品は「墓碑銘」ではないが、ふと墓碑銘を思い起こさせるのは、墓碑銘というものがやはり「知り尽くしていること」を凝縮する形で「新しい姿」として提出することばで構成されているからだろう。
池澤は「テーマは古代ユダヤ史である」と註釈を書き始め、ユダス・マカバイオスらのことを書いているが、私には読んでも理解できなかった。「歴史」はそのとおりな k
だろうが、「実感」には結びついてこない。私は「歴史」がどうにもなじめない。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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ことを始めたのは偉大なるユダス・マカバイオスと
四人の名も高きその弟たちで、
その事業がまこと多くの障害や危難を
勇猛果敢に乗り越えて
今こそ申し分ない形で成就した。
前半部分に出てきたことばが最後にもう一度繰り返される。すこしだけ形を変えて。
偉大なるユダス・マカバイオスと
四人の名高き弟たちが始めた事業は、
申し分ない形で成就した、
正に最も目覚ましい形で。
「偉大」「名高き」「申し分ない」。こういうことばは「常套句」であり「散文的」でもある。けれど「常套句」であるからこそ、その響きには「安心感」がある。真新しい何かではなく、いつもこころに思い描いていたものという「親近感」と言いなおすこともできる。
「偉大」「名高き」「申し分ない」ものが「自分のもの」として感じられる、ということ。
カヴァフィスの書いているのは詩である。詩は、一種、特別な新しいものである。つまり「知らなかったもの」が目の前にあらわれたとき、詩の衝撃は強い。
しかし、カヴァフィスは、それを「自分のもの/知っているもの」に変換させて、詩として提出する。
そういう「特質」があらわれた作品だと思う。
この作品は「墓碑銘」ではないが、ふと墓碑銘を思い起こさせるのは、墓碑銘というものがやはり「知り尽くしていること」を凝縮する形で「新しい姿」として提出することばで構成されているからだろう。
池澤は「テーマは古代ユダヤ史である」と註釈を書き始め、ユダス・マカバイオスらのことを書いているが、私には読んでも理解できなかった。「歴史」はそのとおりな k
だろうが、「実感」には結びついてこない。私は「歴史」がどうにもなじめない。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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