詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

十二時を過ぎたバーは

2015-02-02 00:06:16 | 
十二時を過ぎたバーは

十二時を過ぎたバーはがらんとしていた。
テーブルのまわりに椅子の座面が見えた。空気が固くなっている。
値打ちのない椅子の影と、影になれなかった黄色い光が
床の上に交差して落ちていた。
壁に埋め込まれた明かりがつくり出した影と光が。

ことばは、客が帰るのを待っているバータンダーになって、
好きな小石を探して歩いた遠い川原を思い出す。
水に磨かれたのか、他の石に削られたのか、丸い石。そんなものにも
「磨く」とか「削る」とかということばとなって動く大切なものがある。

あるひとつの石に自分をあずけ握りしめた遠い夏。
いつのまにこころが通わなくなったのか、なくしてしまった。
あの川原のがらんとした夕暮れにも
草の作るまっすぐな影と夕日の黄色い色が広がっていた。


*

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