十二時を過ぎたバーは
十二時を過ぎたバーはがらんとしていた。
テーブルのまわりに椅子の座面が見えた。空気が固くなっている。
値打ちのない椅子の影と、影になれなかった黄色い光が
床の上に交差して落ちていた。
壁に埋め込まれた明かりがつくり出した影と光が。
ことばは、客が帰るのを待っているバータンダーになって、
好きな小石を探して歩いた遠い川原を思い出す。
水に磨かれたのか、他の石に削られたのか、丸い石。そんなものにも
「磨く」とか「削る」とかということばとなって動く大切なものがある。
あるひとつの石に自分をあずけ握りしめた遠い夏。
いつのまにこころが通わなくなったのか、なくしてしまった。
あの川原のがらんとした夕暮れにも
草の作るまっすぐな影と夕日の黄色い色が広がっていた。
*
「谷川俊太郎の『こころ』を読む」はアマゾンでは入手しにくい状態が続いています。
購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
「リッツオス詩選集」も4400円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
十二時を過ぎたバーはがらんとしていた。
テーブルのまわりに椅子の座面が見えた。空気が固くなっている。
値打ちのない椅子の影と、影になれなかった黄色い光が
床の上に交差して落ちていた。
壁に埋め込まれた明かりがつくり出した影と光が。
ことばは、客が帰るのを待っているバータンダーになって、
好きな小石を探して歩いた遠い川原を思い出す。
水に磨かれたのか、他の石に削られたのか、丸い石。そんなものにも
「磨く」とか「削る」とかということばとなって動く大切なものがある。
あるひとつの石に自分をあずけ握りしめた遠い夏。
いつのまにこころが通わなくなったのか、なくしてしまった。
あの川原のがらんとした夕暮れにも
草の作るまっすぐな影と夕日の黄色い色が広がっていた。
*
谷川俊太郎の『こころ』を読む | |
クリエーター情報なし | |
思潮社 |
「谷川俊太郎の『こころ』を読む」はアマゾンでは入手しにくい状態が続いています。
購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
リッツォス詩選集――附:谷内修三「中井久夫の訳詩を読む」 | |
ヤニス・リッツォス | |
作品社 |
「リッツオス詩選集」も4400円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。