25周年が終わって娘との電話のやりとり
「卒業式の音響担当はね、一番報われない仕事って言われてるよ」と。
その先は阿吽の呼吸で、「お母さんもよく頑張ったね。」と、思いが伝わって
来ました。
感覚で受け取ったことを他者に伝えるのは、正確な言語能力を必要とする。と
フェイスブックか何かで読んだよね。
お互い感覚派の母娘は、正しい言語が操れなくてもほとんど過たず思いが伝わる。
私の話声しか聞こえてない夫、そうでなくても端折った物言いの私たちの会話
は、何を伝えあっているのかわからないはずです。ふふ、と、秘密の共有を
している気分になる。
そんな娘にご苦労さんと言ってもらうと、すべての懸念が流れ去って、
「すごーい」の声だけが残るのでした。
25周年当日の音響は、完璧な指示書と、的確な合図で進行しました。
音響機器にかこまれた穴倉に居ても、これまでの経験から舞台のあれこれを
想像しながら、合図のままにオン、オフを繰り返しました。
オン、オフだけの作業だから、新人さんにもできる仕事かというと、出来なく
はないが、この作業は相当に苦しいはずです。
見えない先を想像するにはあまりに経験の少ない人には、苦行でしかないから。
そういう意味で、未経験の方に助っ人を頼むことをしなかったのは、良い判断
でした。
目隠しされたも同然の今日のような作業がこれから先に無い事を祈る。
三人の音響チームがそれぞれの事情で、事前とは違う作業内容になっても、
互いの信頼と事前調査の徹底でできあがった指示書のおかげでやりおおせた
ことを我がチームは、大したもんだと自画自賛。
正直に言うと、ミスは二か所。
その1 式典の4曲目、ミスによる遅滞が起こりました。
どれだけお腹立ちかと首をすくめていたら、「スタート時のがちがち
の緊張がほぐれた」とのことでした! 怪我の功名と言う事に。
その2 CD№選択ミスによるもの。気が付いたらすぐに停止のお願いをして
しっかりお詫びをした上で新たにやり直し。
リスタートは驚かせたせいでしょう不調でした。
すかさず「三度目の正直で」と言葉を入れたのはナレーションの方。
おかげでその後は、スムーズに進行しました。
圧巻は何と言っても「麗しき詩吟女子」と会長とによる書道吟「山中の月」
会長が先ず題と作者をしずしずと書き始めます。
書き終わったら、会長の「エイッ!」の掛け声。
すかさず伴奏スイッチオン!という段取りです。
手に汗を握る場面。この場面は、合図係が出演しているので、芦孝先生の声だけが頼り。
座った位置で体をほぼ水平に傾け、さらに首を長くしてながめると会長の姿が
やっと見える。これで十分。
サラサラと書き下ろして行くその筆の位置を見ながらあともう少しと思われる
ところで体を戻し、こんどは、全神経を耳と指先に集中。
そして「エイッ!」の声。野田会長のご指示の通りのタイミングで伴奏の
スタートが出来たと思う。。。さて、どうだった?
終わって見ると、ここは、合図係がいたら却って一瞬の遅滞が生じたと思う。
目より耳が物をいう場面だった。
完璧な指示書であったが、現場は生き物でした。予想と現実の齟齬に対する
対処と今後の為の修正動作などを書き込んで、次へのデータとする。
これが出来るのも、その指示書が的確であったからできることでした。
信頼する誰かのために、愛する仲間のために、心から楽しんだ穴倉でした。
音量は、人が入るとかなりその体に吸収されるようで、音量の足りない場面も
有ったようです。
善意の伝達に頼らず、決まったスタッフによる音量の良しあしを告げる係は
必須でした。
30周年に向けて、良いデータともなりました。
どなたにもそんな経験はさせたくはないけれど、いろんな積み重ねで困難な
ことも楽しみに変えられる。
さて、私の知らない見えなかったところで、どんな葛藤があり、どんな知恵を
発揮して乗り越えたのでしょうね。
芦孝会チームは、ほとんど苦労話をしないメンツぞろいなので、聞こえて
こないだろうなぁ。
愚痴も修正動作も共有しましょうね。
将来の参考のためにも、愚痴はこぼした方が良いよ。