雨だねぇ。僕は外に出ないから、あまり関係ないんだけど、猫草の生育には、ちっとは関係あるんだろうか?
最近、僕のおねだりが、功を奏してちょっと高級な猫缶が出る時があるんだよねぇ。そんな時は、喜んでお茶碗を空っぽにしてあげると、かあさんは、よく食べたねぇ!って喜ぶよ。
そのおねだりをしたときっていうのは、伴吟があって同窓会があって、目いっぱい心を使った後だったので、着物と袴の片づけがちょっとおろそかだったんだ。
やっと、片付け始めた時に、僕は意地悪をして、袴に乗っかってしまえないようにしてやったんだ。
そのせいかなぁ、僕におべっかを使うつもりなんだろうねぇ。ちょっと、いいやつを注文してくれて、もう何日になるのかなぁ。
僕が、いっぱい食べて空っぽにするから、ご機嫌が続いていたんだけど、それだけではなかったみたいだよ。
どうやら、手紙が、待ちかねていた手紙が届いたみたい。
例の漢詩を作る杜泉さんからの手紙。
遅くなってごめんなさいから始まる手紙で、かあさんの詩吟のテープを、カーステレオで毎日聞いてくれていて、特に漢詩の教室へ向かうときは、必ず聞いてくれていたらしい。
うれしくて、心が動いて、自作の漢詩なのに、涙が出たんだって。
夕陽を見ては泣いて、畑を見ては泣いて。
カセットが届いたことだけを知らせる、とって返しての手紙だったら、いらないんだけどと思っていた母さんもずいぶん長く、連絡がないと、なんだか失礼なことをしたのかと自信を失うくらい時間がかかっていたんだって。
そしたら、そんな返事だったから、そんなに何度も聞いてくれて、心を動かしてくれて、うれしくなって、僕をぎゅーっとしてくれた。
このぎゅーっは、僕はあまりうれしくない。勘弁願いたい。ブラッシングをしてよね。
嘆猪荒圃 新井 杜泉
奪目四山紅与黄 目を奪う 四山 紅と黄と
揺風残菊一枝芳 風に揺らぐ 残菊 一枝芳たり
野猪荒圃君知否 野猪の 圃を荒らす 君知るや否や
憤怒汪然対夕陽 憤怒 汪然 夕陽に対す