熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

2020年:日本は世界第7位の経済国家に?~大前研一

2010年04月14日 | 政治・経済・社会
   先日、IBMのフォーラムで、久しぶりに、大前研一氏の講演を聞いた。
   演題は、「新しい10年へ向かって、今、日本は何をなすべきか」と言うもので、益々縮小して行く斜陽国家日本の市場を向いていては、日本企業の将来は暗いので、快進撃を続けている新興国市場に打って出よと言う何時もの持論の展開であったが、カレント・トピックスを交えての話は、結構パンチが効いていて面白かった。

   冒頭、BRIC's以外にも、何故、その他の新興国家が、経済成長を軌道に乗せて胎動し始めたのかについて、リーマンショック以降、マネーの流れが抜本的に変わってしまったことを強調した。
   かっては、発展途上国家は、先進国に軍事力によって支配されていたが、その後、独立国になってからは、ODAなどによる先進国政府から途上国政府への資金の流れが主流であり腐敗臭が強かった。しかし、今日では、先進国では投資機会が縮小し、有効なリターンを望めなくなった富裕層のファンドや基金などの不要不急の膨大なホームレス・マネー(8000兆円)が、新興国の優良な民間企業に対して、直接株式投資として還流し、新興国の経済を活気付けている。
   これら新興国企業への株式投資は、腐敗脱漏からは開放されており、直接企業を活性化して成果を実現するので、株式市場の伸びに加えて通貨が強くなった相乗効果で、200%以上のリターンを得ている。将来性豊かな新興国への投資は、通貨、株式市場、インデックスしかないと言う。
   特に、大前氏は、インドネシアの経済の安定とその成長力に注目して、BRIIC’sだとまで言うのだが、他にも、VISTA,TIPs、ネクストイレブンなど、少なくとも有望な国家は20はあると言う。

   大前氏の理論展開で面白いのは、将来ロシアを包含したEU経済を高く評価していることで、2020年時点での、世界最大の経済大国はEUであるとする。
   2020年、あるいは+5年時点で、それに続く経済大国は、アメリカ、中国、そして、可能性としてインドで、これに続いて、ブラジル、インドネシアが追い上げて来るので、日本は、第7位の経済国家に成り下がると言うのだが、ロシアを考慮すれば、もっと落ちぶれて行くのかも知れない。

   いずれにしろ、日本経済と同じボリュームを持った巨大な経済が7つも出来上がる訳であり、その内の大半は、欲しい欲しいと言う経済人口が犇く戦後の日本のような成長一途の新興国であるから、日本企業の将来の活路は、この巨大な新興国の市場を攻略する以外にないと言うのである。
   年収3000ドル以下のBOP(最貧層)40億人の巨大市場、それに、年収3000ドルから2万ドルまでの14億人の新富裕層(ボリュームゾーン)市場の攻略について、大前氏は語ったのだが、これは、このブログで、プラハラードなどの理論を展開しながら、何度も語って来たので端折ることとする。
      
   興味深いのは、これらの新興国へ持って行くモノやサービスは、必ずしも最先端を行くものではなくても良く、日本が昔やってきたコトやモノに磨きをかけて持ち込めばよいと言うことである。
   新興国の場合には、経済生活や正確水準が遅れている場合が多いので、そのレベルとニーズにあった事業展開が必要であることは、住友が、アフリカで蚊帳を製造販売して喜ばれて大成功だと言うことからも分かることだが、程度を落とさずに最先端技術で対応するか、旧システムのモノやサービスで対応するかは非常に微妙な選択で、兎に角、現地のニーズやウオントにマッチしなければならないことは事実である。

   更に、大前氏の指摘で興味深いのは、日本が最も得意とするのは、高度な公共サービス、インフラで、これは、最も新興国や途上国で喜ばれると言うことである。
   例えば、トータル・システムとしての鉄道で、新幹線の輸出ばかりが話題に上るが、寸分の隙もないダイヤシステムから駅ビル駅ナカビジネス、Suicaでの決済システム等々を包含したサービス輸出は、格好の売りになると言うのである。
   あるいは、問題の多い郵政のシステムも売りになるかも知れない。
   最近、東京都が主体となって関連企業を糾合して水システムの輸出を促進しようと言う動きが出て来たのだが、これこそ、日本の目指すべき道で、兎に角、ファイナンスも含めてフル・タンキーで、ワンセット・パッケジとして、総合力を結集して、世界市場に打って出ない限り勝ち目はないと考えるべきであろう。

   大前氏のグローバル市場攻略戦略のキーとなるのは、この国際人としての人材の育成で、日本人スタッフの英語力強化など国際的に通用する人材の確保は当然としても、もっと大切なことは、人材の確保とその門戸をグローバルに広げることで、日本人スタッフ採用の半減と外国人スタッフの大幅増を標榜したパナソニックの動きを高く評価していた。

   問題は、新興国市場攻略のために、日本企業が大前戦略を進めて行けば行くほど、日本国内の市場と雇用がどんどん縮小して行くのだろうが、それを補うのは、日本国内市場経済のグローバル化なのだが、ブルドック・ソースを死守しようとした日本人の感覚とメンタリティでは、お先真っ暗と言うことであろうか。
   政府は、関空と伊丹を民間に売却して活性化を図ろうとしているが、成田での買収案を叩き潰したオーストラリアの銀行以外に適切な買収先はないと、大前氏は、日本の外資嫌いを嘆いていたが、どうせ、このままでは、日本の優良企業の多くが、中国やインド企業の軍門に下って行かざるを得ないことを考えれば、ぼつぼつ、日本も目を覚まさなければならない時期に来ていると言うことであろう。
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