今日の日経朝刊に、「iPad部品 日本製影薄く」と言う記事で、米調査会社アイサプライのiPad分解レポートが紹介されていて、非常に興味深かった。
この記事では、部品の大部分は、韓国や台湾製で、日本製は、TDKの電池と東芝のメモリーなど極僅かだと報じていたのだが、デジタル化でコモディティ化の急速なIT関連部品では、日本企業の競争力の低下は当然であり驚くに当たらない。
私が、気になったのは、今に始まったことではないが、相変わらず、アップルが新製品のヒットを飛ばす毎に、部品や素材メーカーなどサプライヤーを叩きに叩いて、膨大な開発者利益を独り占めしていることである。
iPadの部品の原価合計は、250ドルで、小売価格499ドルの半分に過ぎず、残りの半分は、総てアップルの粗利益などの取り分だと言う。
開発販売コストなどアップル側のコストもあろうが、膨大な利益をはじき出していることは間違いない。
アップルの独創的なビジネスモデルに、日本企業で唯一対抗できたのは、wiiなどで人気を博した任天堂だけだと思うが、このアップルのビジネス・モデルこそが、これからの製造関連企業の未来を如実に示している。
特殊な部品や素材などを製造する専業メーカーは、独自のテクノロジーや製品の質などを武器として生き抜く道はあるであろうが、消費者・顧客直結の最終製品を製造しているメーカーは特にそうで、昔のソニーに対して、皆がわくわくして新商品に期待して待っていたように、ニーズとウオントの先を行き、かつ、限りなく満足度を増幅させるような夢のある製品を生み出して行かない限り生きて行けなくなる。
アップルのスティーブ・ジョブズを知ろうと思って、ヤングとサイモンの「スティーブ・ジョブズ ICON:Steve Jobs」を読んだ。
コンピューター、映画、音楽という3つの産業に革命を起こした「ミスター・インクレディブル」の過激な半生というサブタイトル付だが、「自分勝手で短気、粗暴にして狭量でありながら、他人の才能を見抜き、その力を極限まで出し切ることを鼓舞できる稀有なリーダー、起業家にして、マーケティングやデザインのセンスにすぐれ、超タフな矛盾の人」の波乱万丈の半生を描いていて興味が尽きない。
未婚の母から里子に出された出生の秘密から、若い頃インドに渡って導師に従って乞食のような托鉢の放浪旅をした話などは、あまり知られていないが、正に、波乱万丈でハチャメチャな人生の連続で、何度も暗礁に乗り上げながら、生き抜いて来て、イノベーションを連発してきた。
このICONのエピローグで、著者が、面白いことを書いている。
「アップルとマイクロソフトの違いは一つ。アップルのサービスが、やって楽しいことを中心とした消費者指向のものであるのにたいして、マイクロソフトのサービスは、実用一辺倒で、楽しみを追求するようなものではなかった点だ。」
スティーブ自身も、「我々は、テクノロジーなしでは出来ないことが増える時代に生きている。・・・アップルのコアとなる強みは、最先端のハイテクを普通の人にも使い方が分かるように、そして、普通の人が驚き、喜ぶような形で届けられることだ。鍵となるのはソフトウエア。実は、ソフトウエアがユーザー体験そのものなんだ。」と言っている。
アップルの強みが、ソフトウエアとコンテンツの組み合わせにあり、成功の鍵は顧客だと言うことを肝に銘じているのである。
何よりもクリエイティブで価値創造の時代であるが故に、世界中のファンも、投資家も、音楽愛好家や映画ファンも、デジタルオタクの若者たちも、みんな、スティーブが征服する次の世界を見ることが楽しみで仕方がないのだと言うのである。
今も昔も、ウォークマン時代のソニーに対してと同じように、消費者や顧客は、わくわくするような製品やサービスを求めているのだが、ITデジタル革命によって、テクノロジーが爆発的に発展して複雑化した以上、手取り足取りユーザーの手足となり、かつ、感性豊かで楽しみと喜びを増幅するようなモノやサービスを提供してくれることを、企業に期待している。
韓国や台湾に勝ち目がないのに、半導体の市況が良くなれば、半導体工場を増設し、どこの会社でも作っていて、殆ど差のないコモディティと化したテレビやレコーダーやデジカメ製造競争に現を抜かしているのが、日本のメーカーだが、とっくの昔に既に勝負がついてしまっている。
もつづくり立国を標榜しMADE IN JAPANが、世界を席巻していたのは、昔の話で、今や、欧米からの競争のみならず、グローバル化によって、世界中の国々が、工業化社会に突入して来たことを考えれば、新興国の殆どは、日本の強敵であり、まず、第一に、日本の企業が生み出すモノやサービスが、クリエイティブ時代のグローバル市場に満足を与え得るものかどうかさえ疑問である。
破壊的イノベーションの多くは、その時代の最先端かつ最高のテクノロジーではなく、既存の技術や手法の組み合わせで生れており、新しい楽しみと喜びを生み出すようなクリエイティブで価値創造的なモノやサービスの提供には、感性豊かな発想が求められるのであり、技術・テクノロジー深追い的な従来の日本の製造業の得意とする持続的イノベーションだけでは、グローバル競争に太刀打ち出来なくなっている。
それに、成功しているグローバル企業の殆どは、グローバル・スタンダードの体現者であり、ビジネス上では、トータル・システムでのオーガナイザーでありリーダーである場合が多い。
アップルの場合でも、iPodであろうとiPadであろうと、完結したシステムを作り出して、総てをコントロールしており、そのビジネス・モデルの中で膨大な利益を叩き出している。
いくら素晴らしい立派な製品を作ってみても、コモディティ製品や競争が激烈な単なる部品やパーツを作って下請けに成り下がっていては、グローバル競争に勝てないのは当然で、日本の製造業の殆どが旧態依然としたビジネス・システムから脱却出来ていないような気がしている。
この記事では、部品の大部分は、韓国や台湾製で、日本製は、TDKの電池と東芝のメモリーなど極僅かだと報じていたのだが、デジタル化でコモディティ化の急速なIT関連部品では、日本企業の競争力の低下は当然であり驚くに当たらない。
私が、気になったのは、今に始まったことではないが、相変わらず、アップルが新製品のヒットを飛ばす毎に、部品や素材メーカーなどサプライヤーを叩きに叩いて、膨大な開発者利益を独り占めしていることである。
iPadの部品の原価合計は、250ドルで、小売価格499ドルの半分に過ぎず、残りの半分は、総てアップルの粗利益などの取り分だと言う。
開発販売コストなどアップル側のコストもあろうが、膨大な利益をはじき出していることは間違いない。
アップルの独創的なビジネスモデルに、日本企業で唯一対抗できたのは、wiiなどで人気を博した任天堂だけだと思うが、このアップルのビジネス・モデルこそが、これからの製造関連企業の未来を如実に示している。
特殊な部品や素材などを製造する専業メーカーは、独自のテクノロジーや製品の質などを武器として生き抜く道はあるであろうが、消費者・顧客直結の最終製品を製造しているメーカーは特にそうで、昔のソニーに対して、皆がわくわくして新商品に期待して待っていたように、ニーズとウオントの先を行き、かつ、限りなく満足度を増幅させるような夢のある製品を生み出して行かない限り生きて行けなくなる。
アップルのスティーブ・ジョブズを知ろうと思って、ヤングとサイモンの「スティーブ・ジョブズ ICON:Steve Jobs」を読んだ。
コンピューター、映画、音楽という3つの産業に革命を起こした「ミスター・インクレディブル」の過激な半生というサブタイトル付だが、「自分勝手で短気、粗暴にして狭量でありながら、他人の才能を見抜き、その力を極限まで出し切ることを鼓舞できる稀有なリーダー、起業家にして、マーケティングやデザインのセンスにすぐれ、超タフな矛盾の人」の波乱万丈の半生を描いていて興味が尽きない。
未婚の母から里子に出された出生の秘密から、若い頃インドに渡って導師に従って乞食のような托鉢の放浪旅をした話などは、あまり知られていないが、正に、波乱万丈でハチャメチャな人生の連続で、何度も暗礁に乗り上げながら、生き抜いて来て、イノベーションを連発してきた。
このICONのエピローグで、著者が、面白いことを書いている。
「アップルとマイクロソフトの違いは一つ。アップルのサービスが、やって楽しいことを中心とした消費者指向のものであるのにたいして、マイクロソフトのサービスは、実用一辺倒で、楽しみを追求するようなものではなかった点だ。」
スティーブ自身も、「我々は、テクノロジーなしでは出来ないことが増える時代に生きている。・・・アップルのコアとなる強みは、最先端のハイテクを普通の人にも使い方が分かるように、そして、普通の人が驚き、喜ぶような形で届けられることだ。鍵となるのはソフトウエア。実は、ソフトウエアがユーザー体験そのものなんだ。」と言っている。
アップルの強みが、ソフトウエアとコンテンツの組み合わせにあり、成功の鍵は顧客だと言うことを肝に銘じているのである。
何よりもクリエイティブで価値創造の時代であるが故に、世界中のファンも、投資家も、音楽愛好家や映画ファンも、デジタルオタクの若者たちも、みんな、スティーブが征服する次の世界を見ることが楽しみで仕方がないのだと言うのである。
今も昔も、ウォークマン時代のソニーに対してと同じように、消費者や顧客は、わくわくするような製品やサービスを求めているのだが、ITデジタル革命によって、テクノロジーが爆発的に発展して複雑化した以上、手取り足取りユーザーの手足となり、かつ、感性豊かで楽しみと喜びを増幅するようなモノやサービスを提供してくれることを、企業に期待している。
韓国や台湾に勝ち目がないのに、半導体の市況が良くなれば、半導体工場を増設し、どこの会社でも作っていて、殆ど差のないコモディティと化したテレビやレコーダーやデジカメ製造競争に現を抜かしているのが、日本のメーカーだが、とっくの昔に既に勝負がついてしまっている。
もつづくり立国を標榜しMADE IN JAPANが、世界を席巻していたのは、昔の話で、今や、欧米からの競争のみならず、グローバル化によって、世界中の国々が、工業化社会に突入して来たことを考えれば、新興国の殆どは、日本の強敵であり、まず、第一に、日本の企業が生み出すモノやサービスが、クリエイティブ時代のグローバル市場に満足を与え得るものかどうかさえ疑問である。
破壊的イノベーションの多くは、その時代の最先端かつ最高のテクノロジーではなく、既存の技術や手法の組み合わせで生れており、新しい楽しみと喜びを生み出すようなクリエイティブで価値創造的なモノやサービスの提供には、感性豊かな発想が求められるのであり、技術・テクノロジー深追い的な従来の日本の製造業の得意とする持続的イノベーションだけでは、グローバル競争に太刀打ち出来なくなっている。
それに、成功しているグローバル企業の殆どは、グローバル・スタンダードの体現者であり、ビジネス上では、トータル・システムでのオーガナイザーでありリーダーである場合が多い。
アップルの場合でも、iPodであろうとiPadであろうと、完結したシステムを作り出して、総てをコントロールしており、そのビジネス・モデルの中で膨大な利益を叩き出している。
いくら素晴らしい立派な製品を作ってみても、コモディティ製品や競争が激烈な単なる部品やパーツを作って下請けに成り下がっていては、グローバル競争に勝てないのは当然で、日本の製造業の殆どが旧態依然としたビジネス・システムから脱却出来ていないような気がしている。