熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

米軍基地を持つ日本はアジア太平洋の安全保障のための不沈空母か?

2010年04月29日 | 政治・経済・社会
   先日、WSJのオースリンの記事JAPAN DISSINGについて、日米関係を論じた。
   同時期に、ワシントン・ポストが、ジョン・ポンフレットの「日本が沖縄の基地移転に関する米国との紛争の解決に動き出した Japan moves to settle dispute with U.S. over Okinawa base relocation」と言う記事を、そして、英国のファイナンシャル・タイムズが、デイヴィッド・ピリングの「日本政府、日米同盟でぐらつく Tokyo wobbles on the America alliance」」と言う記事を掲載したので、これらの記事に関する感想を交えながら、日米関係、日米安保、沖縄の基地移転等について、もう一度考えてみたい。

   ビリングの記事は、ワシントンの核サミットでのオバマの鳩山首相への冷遇から書き始めて、この種の外交典礼に関してあまり深読みしすぎるのは間違いのもとだとしながらも、この軽視の本質には、1945年以来、東アジア安全保障の要であり続けた日米同盟がこれほど不安定な様相を呈したことは、何年もなかったことにある。鳩山新政権は、沖縄の海兵隊基地移設を巡る交渉を再開した所為で、ワシントンを苛立たせたのだと言う。
   しかし、普天間基地移設問題の諍いは、警告に過ぎず、その背後にあるもっと大きな問題は、東アジアで中国が台頭し米国の影響力が減退して行くと言う情勢変化に日本が取り組むに当たって、戦略再編が起きているのかも知れないと言う問題があるのだと指摘する。
   鳩山首相は、選挙前から、沖縄からの外国ないし県外への移転を説いていたし、小沢幹事長も第7艦隊だけで十分だと発言したり、いずれにしろ、これまでの沖縄だけに苦難を強いて来た基地問題に決着をつけて、平等な日米関係を構築しようと日米安保の問題も含めて見直しムードが日本全体に広がってきていたにも拘らず、アメリカは、普天間問題については、どんな代替案をも認めないと高飛車に突っぱねてきたのであるから、当然、両国の亀裂と格差は大きい。

   ビリングは、日米同盟は日本繁栄の礎石であって、太平洋地域における米安全保障政策に不可欠なもので、過去にも様々な騒動があったが、どうにか持ちこたえて来ており、この日米同盟がバラバラに解けてしまえば、その影響はあまりのも大き過ぎ、日米双方とも、そんな事態を容認できる筈がないと言う。
   日本は米国と米国の核の傘に絶対的に守られているが、それがなくなったら、独自に核武装するか、中国と新しい協力関係を結ぶか、どちらかの道を選ばねばならないが、両方とも無理であろう。これまでの、在日米軍削減の可能性をもてあそぶなど野党だからこそ許された贅沢とも言うべき馬鹿げた考えを捨てて、当面は、現実主義的政治を受け入れざるを得ないであろうが、しかし、20年先を見据えるなら、現状維持のままでずっと続くと予言するには相当な勇気が要ると言う。(Look two decades ahead, and it would be a brabe person to predict that the status quo can hold.)

   一方、ポンフレットの記事は、岡田外務大臣が、現在政府案として流布している2006年の同意案を大筋で呑んだ一部修正案を提示したので、この岡田新パッケジを米国政府が歓迎し、普天間基地移設問題は、解決に大きく近づいたと言う書き出しで始まっており、前述のビリングの記事とニュアンスが全く違う。
   
   私が注目したいのは、ポンフレットの日米同盟に関する米国の次のような見解である。(日本の安全保障などは、一言も書いていないし、眼中ににさえないことに注意。)
   ”日米同盟は、アジアにおけるアメリカの政策の要であり、何十年にも亘って、同地域の安全保障の基本であった。この同盟関係が、動揺すれば、この影響は、地域全体に伝播し、韓国からオーストラリアに至る政府に、米国の安全保障の将来について危惧を与える。”(The U.S. alliance with Japan is the centerpiece of American policy in Asia and has been a foundation of security in thw region for decades. As the alliance has mavered, concern has spread across the region, with officials from South Krea to Australia expressing worries about the future of the U.S. security role.)

   私は、前のWSJのオースリンの記事のコメントでも記したが、この日米安保の基本的な精神は、我々日本人が考えているように、米国が核の傘の許に日本を守ってくれるだとか、北朝鮮などの外国からの軍事的脅威に対して抑止力を持つとかと言った手前勝手な次元の問題ではなく、(それは、あくまで交換条件であって、)日本の米軍基地は、アメリカの安全保障政策の要の一つであり、アジア太平洋地域の安全保障の基地と言うべきで、いわば、日本は、アメリカの国益第一のアジア太平洋の安全を守るための不沈空母と目されて来たのである。

   アジア地域の国々は、日本の軍事大国化に対しては極めて拒否的だが、わが日本は、自国を自分自身で守ると言う独立国家の独立国家たる由縁の誇りさえ投げ打って平和主義を貫いて来ており、更に、戦後50年の間、米軍の存在を受け入れて、アメリカの国益第一とは言えアジア太平洋の安全保障の基地を提供し続けて来た。
   その日本の平和維持のための貢献や役割に対して、アメリカから正当に評価され、アジア太平洋の国々なり人々が、一顧だに注意を払ったことがあったであろうか。
   
   私は、日米安全保障と普天間基地移設については早期解決を望んでいるが、今の政府案で決着しても、沖縄の犠牲を継続することとなり、日本だけが不沈空母である必要は毛頭ないであろうし、もっと基本的な問題であるアジア太平洋地域における安全保障のあるべき姿とか、正常かつ平等な日米関係のあり方等には一切手付かずに決着することとなり、憂慮に堪えない。
   しかし、何度か沖縄を訪問しており、普天間近辺は勿論、沖縄の人々が、米軍基地があるが故に、長年に亘って如何に苦しい生活を強いられているのかを思うと、居た堪れない気持ちでもある。
   五月末と言わずに、緊褌一番、何が、日本およびその国益にとって、そして、沖縄の人々にとって最善なのか、世界平和のことも勿論だが、今こそ、真剣に知恵を絞って考えるべきであろう。
   

   
   
   
   
コメント
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