熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

パリ、ブリュッセルのテロの恐怖に思う

2016年03月23日 | 政治・経済・社会
   先のパリに続いて、22日にブリュッセルの国際空港と地下鉄で、連続テロが発生し、ISが犯行声明を出した。
   世界中に国際紛争地域が広がっていて、地球上のどこで、凶悪犯罪が起こっても不思議ではないほど、危機的な状態が続いている。
   しかし、今回のヨーロッパでのテロの元凶は、これまでのテロ組織によるものではなく、すべて、雨後のタケノコのように短期間に台頭してきたISが関係しているところに、問題の本質と深刻さがある。

   私が、ヨーロッパにいた時には、ロンドンなどイギリス国内で頻発していたテロは、殆ど、アイルランド独立闘争を行ってきた武装組織であるアイルランド共和軍(Óglaigh na hÉireann、Irish Republican Army、略称:IRA)によるものであった。

   私が、ロンドンで遭遇した大きなIRAのテロの一つは、ロンドンのシティの金融の中心街を爆破した1993年3月のテロ事件で、熊谷組のビルが爆破を受け、三和銀行のロンドン支店など日系企業のオフィスが吹っ飛ぶなど、結構、激しかった。
   Saturday, April 24, 1993
(Reuters) - An IRA bomb ripped through the heart of London's financial district on Saturday, wounding more than 30 people and causing extensive damage to prestige office buildings. The bomb was packed into a construction lorry parked near two bank buildings, the Hong Kong and Shanghai Bank and the landmark NatWest Tower.

   しかし、その後、私は、イギリスを離れて、久しぶりに、イタリア経由でロンドンに入った当日、すなわち、2005年7月7日、現地時間午前8時50分頃、ロンドンの地下鉄の3か所がほぼ同時に、その約1時間後にバスが爆破され、56人が死亡したロンドン同時爆破事件と言う凶悪なテロ事件に、遭遇したのである。
   テロを起こしたのは、「欧州の聖戦アルカーイダ組織」で、最早、IRAではなかった。

   ところが、当日、ミラノ空港でのアリタリアのスト騒ぎで代替航空便手配などで疲労困憊して、やっとのことでヒースローに着き、特急とタクシーを乗り継いて、定宿のジェントルマン・クラブRACに投宿して、そのまま寝こんでしまったので、ロンドン同時多発テロの恐怖は、迂闊にも、翌日、目を覚まして、妻に電話するまで、気付かなかったのである。
   その時の模様などは、このブログの「欧州紀行(文化三昧ミラノ・ロンドン旅)」に詳しく書いてある。

   ここで、私が言いたいのは、テロ事件当日であっても、ロンドンは極めて平穏であり、翌日から、殆ど平常と変わらずに動いていたと言うことである。
   当日、ヒースロー空港も、エクスプレスも何の異常もなかったし、パディントン駅からバッキンガム宮殿のすぐそばのRCAまでのタクシーも、途中、カラフルな色のパトカーが停まって一箇所車道をを閉鎖していたが、夜の9時前には無事RACにチェックインした。
   それに、翌日は平常に戻り、その日の午後、サウスバンクのグローブ座でシェイクスピアの「ペリクリーズ」、そして、その夜、ロンドン塔でドニゼッティのオペラ「アンナ・ボレーナ」を楽しむことが出来た。

   確かに、バスや地下鉄の運航は、乱れてはいたが、その夜、オペラが跳ねた後、私は、ロンドン塔からメトロでRACまで帰った。
   その後、予定通りに、再度、グローブ座に行き、ロイヤル・オペラに通い、ウエストエンドでブルック・シールズの「シカゴ」を観るなど、そして、大英博物館やナショナルギャラ―を訪れるなど文化三昧のロンドン旅を満喫した。
   そのあたりの話は、ブログに書いてあるのだが、要するに、大規模なテロ事件が勃発すると、一気に、その都市、ロンドンなり、パリなりが、常軌を逸したような状態に陥り、観光には、全く危険となって、旅行を取りやめるべきだと言う気持ちには、ならないだろうと言うことである。
   同じような事件が、連続して再発する可能性は殆どないと思っているし、私の場合には、ヨーロッパ8年を含めて、アメリカ、ブラジルなど海外で14年も生活していて、凶悪なテロ事件は勿論、危険とは隣り合わせに住み続けていたようなものであるから、異国で危険なのは、当然だと思っていたのかも知れない。
   スイスの街を歩いていたら、目の前をポリスがダッシュして、アパートを取り巻いて急襲する場に遭遇したり、スキポール空港で飛行機から降りようとしたら、兵隊が並んで自動小銃を構えて出迎えたり、どうにかこうにか、異国で、無我夢中で生きてきたと言う思いがある。

   さて、しかし、今なら、私は、このように悠長な気持ちで、ヨーロッパに住めるかどうかは、疑問だと思っている。
   今や、疑似国家とも言うべき、巨大で複雑な組織と膨大な資金を持って、エスタブリッシュを破壊して天下を取ろうとするイスラム国家が、全世界を敵に回して戦おうとしている。
   世界各地に刺客やテロ集団を派遣して、テロ行為を起こして攪乱戦争を仕掛けようとしているのであるから、最早、IRAやアルカイダなどの比ではなくなっている。
   まして、独善的なジハード(「神の道のために奮闘することに務めよ」)で、死ねば天国に行けると信じている戦士たちの集団なのである。

   アラブ諸国が宗派争いにイスラムを忘れ、ヨーロッパが難民問題で汲々とし、米ソがお粗末な駆け引きをしている間に、危機は足音をたてて、そこまで近づいてきている。

   ジョン・キャスティのXイベントを読んでいると、その恐ろしさが見えてくるのだが、今や、テロ集団に核兵器が行き渡るのは時間の問題であろうし、単純な話、電子パルスEMP
で電子機器が止められてしまったら、現代社会が機能停止してしまうなど、何が起こるか分からない。
   
   グローバル世界を取り巻くテクノロジーや科学技術は、日進月歩の急速な進歩を遂げて発展し続けているにも拘わらず、国際政治や外交の世界は、前世紀と殆ど変わらず、複雑系の乖離が益々進行し、破壊寸前の様相を呈しつつある。
   欧米日などで代表される先進国とISの戦いは、文化文明の衝突であり、格差の衝突、新しい南北問題の勃発であり、須らく、異分子間の熾烈な戦いであり、科学技術と政治経済社会システムの複雑系の乖離が爆発すればどうなるのか、
   パリやブリュッセルの連続多発テロを、これまでのテロと同じような形で抑え込もうとしている欧米の試みが、成功するのかどうかは、大いに疑問である。
コメント
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