熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

三月大歌舞伎…中村雀右衛門襲名披露

2016年03月18日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   今月の歌舞伎座公演は、中村雀右衛門の襲名披露公演で、 五代目は、歌舞伎において、時代物の姫役のうち至難とされている三姫と言われている「本朝廿四孝」の八重垣姫、「鎌倉三代記」の時姫、「祇園祭礼信仰記」の雪姫のうち、時姫と雪姫を演じると言う大舞台で、正に、檜舞台の素晴らしい公演である。
   今回は、襲名披露口上もあり、縁戚の高麗屋の総帥である幸四郎や、菊五郎、吉右衛門、仁左衛門が重要な舞台を務め、それに、藤十郎が、先代が最晩年に演じた慶寿院尼で登場すると言う豪華公演でもあり、少し、重いので、二日に分けて歌舞伎座に通った。
   
   

   先代の雀右衛門については、自著の「私事―死んだつもりで生きている」や「女形無限」、それに、渡辺保の「名女形・雀右衛門」などを読んでいるので、雀右衛門の芸論や芸道、私的な履歴なども含めて、かなり、知っているつもりである。
   披露口上で、梅玉が、雀右衛門は、80になるまで、颯爽とした井出達で、バイクに乗っていたとダンディぶりを紹介し、新雀右衛門はそうでなさそうだと語って観客を喜ばせていたが、この本には、その話の写真も載っており、若い時に、映画俳優としても活躍していたことなど、面白い逸話などが垣間見えて興味深いのである。
   女形が美しいのは、この世にない女を演じるからだと語っていたのを思い出すのだが、確かに、簑助の遣う人形の後ろぶりの美しさ素晴らしさは、人形だから出来る芸であることを想えば、分かるような気がする。
   私の歌舞伎座通いも20数年になるので、四代目雀右衛門の至芸を楽しむことの出来たのも、やはり、20年近くなると言うことである。

   さて、これまでに襲名披露は立役ばかり見ており、福助の歌右衛門襲名披露が遠のいたので、雀右衛門で、女形の襲名披露は久しぶりだと言うことであろうが、私は、まだ、女形のは見たことがない。
   大原雄の”「襲名披露」ということ”によると、
   ”四代目雀右衛門は、2012年2月逝去だが、次男の芝雀(力はあるのだが、地味で存在感が今ひとつだった)の表情、演技などが時々、「親父さん。そっくり」と大向うから、褒め言葉の声がかかるようになったから、父親の没後4年で、五代目を襲名しても良いだろうし、改名後大きく飛躍するような予感がする、という状況ではある。”

   五代目雀右衛門については、秀山祭や国立劇場などで、殆ど何時もと言って良いくらいに、吉右衛門の相手役として素晴らしい舞台を見せているので、何時も感動しながら鑑賞させてもらっている。
   通し狂言「伊賀越道中双六」の「岡崎」での、吉右衛門の唐木政右衛門に対して芝雀のお谷、北條秀司作の「井伊大老」での、吉右衛門の直弼に対して芝雀のお靜の方などは、出色の舞台で、非常に感動的であった。

   今回の「鎌倉三代記」の時姫は、初役だと言うことだが、菊五郎と吉右衛門と言う人間国宝の両雄を相手にして、艶やかで格調の高い赤姫を演じていた。
   「祇園祭礼信仰記」の「金閣寺」も、幸四郎の松永大膳、仁左衛門の此下東吉とも互角に組んでの熱演であり、悲嘆にくれる雪姫に降りしきる花吹雪は、これまで見たどの雪姫よりも激しくて豪華で、目を見張るような美しい舞台であった。
   雀右衛門の舞台や見取りのほかの舞台の感想は、稿を改めたい。
   

   この日、歌舞伎座一階の売店には、雀右衛門の襲名記念グッズコーナーが、設けてあって、私には、何となく女性趣味品のような感じがしたので素通りしたけれど、結構客が集まっていた。
   先月もそうだったが、今回は、「金閣寺」の舞台のシーンがディスプレイされていた。
   舞台の定式幕の下の雀右衛門への記念幕がお祭り気分を醸し出していた。
   
   
   
コメント (1)
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