NHKの「混迷の世紀 プロローグ “プーチンの戦争” 世界はどこに向かうのか」の第2のトピックスは、「グローバル経済」。
トーマス・フリードマンが、『 フラット化する世界 』を歌い上げた21世紀のグローバル化が大きく世界経済を高揚させてきたが、米中の対立やウクライナ戦争による東西の分裂などで、一気に、グローバリゼーションが暗転し始めてきた。
この番組では、まず、プーチンが「膨大な天然資源を持つロシアは、先進国の中でも特別な存在だ。エネルギーは経済構造を変えるチャンスだ。世界市場でしかるべき地位を獲得する。」と豪語して推進してきたロシアの世界を震撼させているエネルギー戦略・資源戦略について詳述し、
続いて、ウクライナ戦争によって引き起こされた食料供給網の大混乱を活写して、岐路に立つグローバル経済を論じている。
総括論として、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授の論を引くと、
「今や、私たちはグローバル化から、脱グローバル化という歴史の転換点に立っています。過去にもこうしたことはありました。第1次世界大戦の前は、急速にグローバル化が進む時代でしたが、第2次大戦の前は脱グローバル化の時代で、とてつもなく政治的な緊張が高まりました。同じことが起こる危険性があります。地政学的な問題が関わるので、予測はしにくいのですが、そうなることを大いに懸念しています」
いま、経済圏が分断され、経済のブロック化が進んでいるように見えるが、再び冷戦時代に見たような、経済の分断が起こると思うかという問いに対して、
「重要な指摘だと思います。経済面でも第2の冷戦に突入する可能性があります。このままでは、ロシア、そして中国とほかの国々の間に、新たな鉄のカーテンができるかもしれません。インド、南アフリカ、ブラジルなども西側諸国と距離をとれば、30~40年前(冷戦期)と同じことが起こります。世界経済にとって非常に悪いシナリオです。今考えられているよりも、ずっとひどいことになるでしょう」
国際経済は、脱グローバル化して、東西分断の新冷戦時代に逆戻りしたというのである。
今回のウクライナ戦争で露呈した最悪の事例は、ドイツの異常とも言うべきロシアへの依存度で、右往左往するドイツのロシア天然ガス狂騒曲だと思う。
原子力発電から決別したドイツでの、2021年の1次エネルギー消費量構成は、石油31.8%、天然ガス26.7%、石炭8.6%で化石燃料で6割を超えている。このうちロシアへの依存度が高く、2020年には、石油34%、天然ガス55%、石炭45%がロシアからの輸入で、特に、天然ガスは国内需要の9割以上を輸入に頼っていて、その輸入の半分以上をロシアに依存している。と言う。
これは、相手がロシアという第二次世界大戦で熾烈な戦争をし、現実にも仮想敵国と思しき国でありながら、それを忘れてしまって、ロシアを完全なる同盟国として信頼しきった国家戦略であったのか、歴史が終って民主主義のグローバル経済の時代になって逆戻りはないと判断したのか、それとも、ロシアのカントリーリスクはゼロと見誤ったのか、等々、ドイツの常軌を逸した能天気と愚かさを暴露していて、寝首をかかれても当然であり、ここまで来ると喜劇だとしか言いようがない。
余談だが、1970年代から1980年代、日本企業の勃興期で、世界市場に破竹の勢いで進出していた頃には、新規市場など進出国のカントリーリスクが、最大の課題であった。
ウィキペディアを引用させて貰うと、
カントリーリスクとは、「海外投融資や貿易を行う際、対象国の政治・経済・社会環境の変化のために、個別事業相手が持つ商業リスクとは無関係に収益を損なう危険の度合いのこと。 GDP、国際収支、外貨準備高、対外債務、司法制度などの他、当該国の治安、政情、経済政策などといった定性要素を加味して判断される。」
発展途上国など、内乱や政変や暴動、国有化など頻繁に起こっていたし、朝令暮改の優遇策や税制、それに国際法遵守など当てには出来ないし、とにかく、世界を知らない日本企業がヨチヨチ歩きながら果敢に海外に打って出たので無謀な海外進出も多かったが、リスク調査には余念がなかったし、今回のロシアに対するドイツのような無防備な対応などはあり得なかった。
全農グレインの川﨑浩之副社長が、「食料安全保障を重要と考えている国々のレベル感が変わった。地政学的なリスクをよくわきまえた上で、サプライチェーンを強化していくことが重要になってきている」と述べていたが、至極当然であろう。
言い換えれば、地政学的なカントリーリスクやホスト国の政治経済社会情勢を十分に考慮して、サプライチェーンを構築するなど、貿易にしろ投融資にしろ、新時代に即応したグローバル対応に務めるべきと言うことであろう。
今後、国際経済が、脱グローバル化して、ブロック化するなど、益々、分断されてくるので、自国だけでは自立不可能であり國際協力の中でしか生きていけない日本の立ち位置は、非常に微妙となり、更なる有効な対応が求められよう。
グローバリゼーション下で構築されていたビジネス戦略や戦術を、脱グローバリゼーションと東西分裂の新冷戦時代に即応したパラダイムシフトが求められている。
トーマス・フリードマンが、『 フラット化する世界 』を歌い上げた21世紀のグローバル化が大きく世界経済を高揚させてきたが、米中の対立やウクライナ戦争による東西の分裂などで、一気に、グローバリゼーションが暗転し始めてきた。
この番組では、まず、プーチンが「膨大な天然資源を持つロシアは、先進国の中でも特別な存在だ。エネルギーは経済構造を変えるチャンスだ。世界市場でしかるべき地位を獲得する。」と豪語して推進してきたロシアの世界を震撼させているエネルギー戦略・資源戦略について詳述し、
続いて、ウクライナ戦争によって引き起こされた食料供給網の大混乱を活写して、岐路に立つグローバル経済を論じている。
総括論として、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授の論を引くと、
「今や、私たちはグローバル化から、脱グローバル化という歴史の転換点に立っています。過去にもこうしたことはありました。第1次世界大戦の前は、急速にグローバル化が進む時代でしたが、第2次大戦の前は脱グローバル化の時代で、とてつもなく政治的な緊張が高まりました。同じことが起こる危険性があります。地政学的な問題が関わるので、予測はしにくいのですが、そうなることを大いに懸念しています」
いま、経済圏が分断され、経済のブロック化が進んでいるように見えるが、再び冷戦時代に見たような、経済の分断が起こると思うかという問いに対して、
「重要な指摘だと思います。経済面でも第2の冷戦に突入する可能性があります。このままでは、ロシア、そして中国とほかの国々の間に、新たな鉄のカーテンができるかもしれません。インド、南アフリカ、ブラジルなども西側諸国と距離をとれば、30~40年前(冷戦期)と同じことが起こります。世界経済にとって非常に悪いシナリオです。今考えられているよりも、ずっとひどいことになるでしょう」
国際経済は、脱グローバル化して、東西分断の新冷戦時代に逆戻りしたというのである。
今回のウクライナ戦争で露呈した最悪の事例は、ドイツの異常とも言うべきロシアへの依存度で、右往左往するドイツのロシア天然ガス狂騒曲だと思う。
原子力発電から決別したドイツでの、2021年の1次エネルギー消費量構成は、石油31.8%、天然ガス26.7%、石炭8.6%で化石燃料で6割を超えている。このうちロシアへの依存度が高く、2020年には、石油34%、天然ガス55%、石炭45%がロシアからの輸入で、特に、天然ガスは国内需要の9割以上を輸入に頼っていて、その輸入の半分以上をロシアに依存している。と言う。
これは、相手がロシアという第二次世界大戦で熾烈な戦争をし、現実にも仮想敵国と思しき国でありながら、それを忘れてしまって、ロシアを完全なる同盟国として信頼しきった国家戦略であったのか、歴史が終って民主主義のグローバル経済の時代になって逆戻りはないと判断したのか、それとも、ロシアのカントリーリスクはゼロと見誤ったのか、等々、ドイツの常軌を逸した能天気と愚かさを暴露していて、寝首をかかれても当然であり、ここまで来ると喜劇だとしか言いようがない。
余談だが、1970年代から1980年代、日本企業の勃興期で、世界市場に破竹の勢いで進出していた頃には、新規市場など進出国のカントリーリスクが、最大の課題であった。
ウィキペディアを引用させて貰うと、
カントリーリスクとは、「海外投融資や貿易を行う際、対象国の政治・経済・社会環境の変化のために、個別事業相手が持つ商業リスクとは無関係に収益を損なう危険の度合いのこと。 GDP、国際収支、外貨準備高、対外債務、司法制度などの他、当該国の治安、政情、経済政策などといった定性要素を加味して判断される。」
発展途上国など、内乱や政変や暴動、国有化など頻繁に起こっていたし、朝令暮改の優遇策や税制、それに国際法遵守など当てには出来ないし、とにかく、世界を知らない日本企業がヨチヨチ歩きながら果敢に海外に打って出たので無謀な海外進出も多かったが、リスク調査には余念がなかったし、今回のロシアに対するドイツのような無防備な対応などはあり得なかった。
全農グレインの川﨑浩之副社長が、「食料安全保障を重要と考えている国々のレベル感が変わった。地政学的なリスクをよくわきまえた上で、サプライチェーンを強化していくことが重要になってきている」と述べていたが、至極当然であろう。
言い換えれば、地政学的なカントリーリスクやホスト国の政治経済社会情勢を十分に考慮して、サプライチェーンを構築するなど、貿易にしろ投融資にしろ、新時代に即応したグローバル対応に務めるべきと言うことであろう。
今後、国際経済が、脱グローバル化して、ブロック化するなど、益々、分断されてくるので、自国だけでは自立不可能であり國際協力の中でしか生きていけない日本の立ち位置は、非常に微妙となり、更なる有効な対応が求められよう。
グローバリゼーション下で構築されていたビジネス戦略や戦術を、脱グローバリゼーションと東西分裂の新冷戦時代に即応したパラダイムシフトが求められている。