ブルームバーグが、昨日のネット通信で、「ロシアの実力」として次のように報じた。張り子の虎であることを露呈したというのである。
「ロシアの超大国イメージ吹き飛ぶ、6カ月の戦争で軍の実力不足が露呈」
プーチン大統領のウクライナ侵攻から6カ月。ロシアの軍事力と経済に関する根本的な仮定が覆された。ロシアは「米国と軍事的に対等」ではなく、米国よりも小さいNATO加盟国にすら劣ると、英スコットランドのセントアンドルーズ大学で戦略研究を専門とするフィリップス・オブライエン教授は指摘。今回の戦争で、ロシアは「英国やフランス、イスラエルが実行できるようなやり方で複雑な作戦を遂行できないことが明らかになった。その意味で、二流の軍事大国ですらない」と語った。進軍が低調にとどまっている理由の一つは、軍が人員面の投資不足を隠しおおせると考えていたことで、これが戦争になってから明らかになったと、ワシントンの安全保障シンクタンク、CNAのマイケル・コフマン氏は分析する。
ロシア軍はミサイル発射装置と防空システム、兵站、約50台の戦車と軍用車両を備える大隊戦術グループ(BTG)で構成される。それぞれのBTGには700人から900人の兵士が所属するとされ、それに基づくとウクライナ侵攻前に国境に終結したロシア軍兵士の数は約15万人に上ることが示唆された。だが現実には1BTGの兵員数は平均で600人かそれ以下でしかなく、侵攻開始時のロシア正規軍総兵力は9万人程度だった可能性があると、コフマン氏は最近、ポッドキャストで説明した。と言う。
注目したいのは、これまで何度も書いているが、ロシアの経済力のお粗末さであり、次の指摘である。
「制裁が輸入を阻む中で、ロシアが技術的に進んだ兵器を生産する能力は一層後退する公算が大きい。ウクライナの戦場で奪取したり破壊したりしたロシアの軍用品に関する研究によって、ドローンやミサイル、通信装備など27の重要な軍用システムで450の外国部品が使われていたことが判明。これら部品の大半は米国製で、残りは主にウクライナを支援する諸国からだった。」
濡れ手に粟の天然ガスや石油などの輸出収入に胡座をかいて、経済政策の根幹である産業の近代化や合理化に傾注せずにモノカルチュア経済に安住した結果、高度な工業製品やパーツは生産できずに輸入頼りで、西側先進国の経済制裁が強化され、グローバル・サプライチェンから排除されると、高度な武器や軍需製品の生産はお手上げだと言うことである。
すでに、エアーバッグやABSなどの安全装置のない自動車が生産されているとか、半導体の不足で、ウクライナで略奪した食洗機などから抽出した半導体を戦車に転用しているとか報道されていたが、パーツがなければ、高度な軍用機やミサイルなど、生産できるはずがなく、自国軍の軍事需要さえ充足できないのであるから、ロシア経済の主要産業である軍用機や武器の輸出など出来ず筈がなくなる。
テレビや新聞、インターネットなどのメディア情報では、西側の経済制裁が殆ど効いておらず、ロシア人の日常生活は、多少の物価上昇や売り上げの減少くらいで、以前と殆ど変っていないと報じられている。
しかし、私は、これはロシア政府が、消費財など大量に中国から輸入するなど、国民生活への巧妙な政策が機能しているだけであって、深層の重要な製造業など基幹産業などは大きく毀損していて、時間が経つにつれて、じわじわと、ロシア経済を窮地に追い込んで弱体化して、凋落の一途を辿ってゆくような気がしている。
因みに、歳川 隆雄氏が、「MARKETS INSIDER」のインタビューを引用して、ポール・クルーグマンが、
「ロシアの輸入が前年比40%以上減少する一方で輸出減少は10%以下に留まる」と述べた上で、次のように指摘したと報じている。
(1)対露制裁は輸出制限ではなく輸入制限で予想外の効果を発揮している、(2)外国製品購入が困難となり物品不足から工業生産量とGDPを悪化させている、(3)対露輸出禁止措置によってロシアと制裁国との貿易量は60%減少、非制裁国との貿易量も40%減り、ロシアの工業生産量は50%超の減少となった――。
また、ニューズウィークは、「ウクライナ侵攻から半年、巨額損失で「万策尽きた」プーチン」という記事で、
元米陸軍大将のバリー・マッカフリーは8月22日、ツイッターへの投稿で、プーチンは「万策尽きて」おり、彼にとっての状況は今後、急速に悪化していくだろうと述べた。マッカフリーはまた、ロシア軍は「作戦面で困難な状況にあり」、ロシア全体に「軍事的な損失と経済的な孤立のの深刻なひずみが生じ始めている」とも指摘した。と報じている。
ウクライナ戦争初期から、ロシアが、経済小国であり軍事小国であることを言及し続けてきたが、それさえ認識できずに、ピヨトル大帝を夢見て、ソ連の復活を目論んでいたというプーチンの誇大妄想と能天気ぶり、そして、ロシアの現状認識さえ真面に出来ずに、プーチンに入れあげているロシア人のお粗末さに驚かざるを得ない。
ただでさえ、弱体なロシアが、このウクライナ戦争で疲弊して国力を落とし、さらに、日進月歩の成長を続けているグローバル経済から隔離されて取り残されて行くことを考えると、その帰趨は明白である。
ところで、私は、結果として述べただけであって、ロシアが弱体化するのを望んでいるわけではない。
民主主義擁護の立場で、西側の自由で平等な民主的な社会を高く評価しているが、アメリカの覇権にも問題があると思っているので、カウンターベイリング・パワーとしてのロシアの存在は貴重なのである。
この視点については、項をあらためて書いてみたい。
「ロシアの超大国イメージ吹き飛ぶ、6カ月の戦争で軍の実力不足が露呈」
プーチン大統領のウクライナ侵攻から6カ月。ロシアの軍事力と経済に関する根本的な仮定が覆された。ロシアは「米国と軍事的に対等」ではなく、米国よりも小さいNATO加盟国にすら劣ると、英スコットランドのセントアンドルーズ大学で戦略研究を専門とするフィリップス・オブライエン教授は指摘。今回の戦争で、ロシアは「英国やフランス、イスラエルが実行できるようなやり方で複雑な作戦を遂行できないことが明らかになった。その意味で、二流の軍事大国ですらない」と語った。進軍が低調にとどまっている理由の一つは、軍が人員面の投資不足を隠しおおせると考えていたことで、これが戦争になってから明らかになったと、ワシントンの安全保障シンクタンク、CNAのマイケル・コフマン氏は分析する。
ロシア軍はミサイル発射装置と防空システム、兵站、約50台の戦車と軍用車両を備える大隊戦術グループ(BTG)で構成される。それぞれのBTGには700人から900人の兵士が所属するとされ、それに基づくとウクライナ侵攻前に国境に終結したロシア軍兵士の数は約15万人に上ることが示唆された。だが現実には1BTGの兵員数は平均で600人かそれ以下でしかなく、侵攻開始時のロシア正規軍総兵力は9万人程度だった可能性があると、コフマン氏は最近、ポッドキャストで説明した。と言う。
注目したいのは、これまで何度も書いているが、ロシアの経済力のお粗末さであり、次の指摘である。
「制裁が輸入を阻む中で、ロシアが技術的に進んだ兵器を生産する能力は一層後退する公算が大きい。ウクライナの戦場で奪取したり破壊したりしたロシアの軍用品に関する研究によって、ドローンやミサイル、通信装備など27の重要な軍用システムで450の外国部品が使われていたことが判明。これら部品の大半は米国製で、残りは主にウクライナを支援する諸国からだった。」
濡れ手に粟の天然ガスや石油などの輸出収入に胡座をかいて、経済政策の根幹である産業の近代化や合理化に傾注せずにモノカルチュア経済に安住した結果、高度な工業製品やパーツは生産できずに輸入頼りで、西側先進国の経済制裁が強化され、グローバル・サプライチェンから排除されると、高度な武器や軍需製品の生産はお手上げだと言うことである。
すでに、エアーバッグやABSなどの安全装置のない自動車が生産されているとか、半導体の不足で、ウクライナで略奪した食洗機などから抽出した半導体を戦車に転用しているとか報道されていたが、パーツがなければ、高度な軍用機やミサイルなど、生産できるはずがなく、自国軍の軍事需要さえ充足できないのであるから、ロシア経済の主要産業である軍用機や武器の輸出など出来ず筈がなくなる。
テレビや新聞、インターネットなどのメディア情報では、西側の経済制裁が殆ど効いておらず、ロシア人の日常生活は、多少の物価上昇や売り上げの減少くらいで、以前と殆ど変っていないと報じられている。
しかし、私は、これはロシア政府が、消費財など大量に中国から輸入するなど、国民生活への巧妙な政策が機能しているだけであって、深層の重要な製造業など基幹産業などは大きく毀損していて、時間が経つにつれて、じわじわと、ロシア経済を窮地に追い込んで弱体化して、凋落の一途を辿ってゆくような気がしている。
因みに、歳川 隆雄氏が、「MARKETS INSIDER」のインタビューを引用して、ポール・クルーグマンが、
「ロシアの輸入が前年比40%以上減少する一方で輸出減少は10%以下に留まる」と述べた上で、次のように指摘したと報じている。
(1)対露制裁は輸出制限ではなく輸入制限で予想外の効果を発揮している、(2)外国製品購入が困難となり物品不足から工業生産量とGDPを悪化させている、(3)対露輸出禁止措置によってロシアと制裁国との貿易量は60%減少、非制裁国との貿易量も40%減り、ロシアの工業生産量は50%超の減少となった――。
また、ニューズウィークは、「ウクライナ侵攻から半年、巨額損失で「万策尽きた」プーチン」という記事で、
元米陸軍大将のバリー・マッカフリーは8月22日、ツイッターへの投稿で、プーチンは「万策尽きて」おり、彼にとっての状況は今後、急速に悪化していくだろうと述べた。マッカフリーはまた、ロシア軍は「作戦面で困難な状況にあり」、ロシア全体に「軍事的な損失と経済的な孤立のの深刻なひずみが生じ始めている」とも指摘した。と報じている。
ウクライナ戦争初期から、ロシアが、経済小国であり軍事小国であることを言及し続けてきたが、それさえ認識できずに、ピヨトル大帝を夢見て、ソ連の復活を目論んでいたというプーチンの誇大妄想と能天気ぶり、そして、ロシアの現状認識さえ真面に出来ずに、プーチンに入れあげているロシア人のお粗末さに驚かざるを得ない。
ただでさえ、弱体なロシアが、このウクライナ戦争で疲弊して国力を落とし、さらに、日進月歩の成長を続けているグローバル経済から隔離されて取り残されて行くことを考えると、その帰趨は明白である。
ところで、私は、結果として述べただけであって、ロシアが弱体化するのを望んでいるわけではない。
民主主義擁護の立場で、西側の自由で平等な民主的な社会を高く評価しているが、アメリカの覇権にも問題があると思っているので、カウンターベイリング・パワーとしてのロシアの存在は貴重なのである。
この視点については、項をあらためて書いてみたい。