【授業】 人間とはなんだろうか?

昨日私が行った授業の記事です。
来週の道徳公開講座に向けての第2段目のステップとなります。

今回は林竹二先生の授業を私なりに構成しなおした内容でした。ビーバーの習性と人間の知性を比較することによって、人間の持っているものはいったい何なのかを考えていく授業です。この林先生の著作はぜひとも読んでみて下さい。林先生は『授業による学習者の変革』ということをテーマにして日本各地の学校で授業を続けてきた実践の鬼だと私は思っています。

授業 人間について (現代教育101選)
林 竹二
国土社

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まず、授業の構成を簡単に書きます。次に授業を受けた子どもたちの様子、そして子どもたちの感想をいくつか紹介します。


(1)授業の構成

①ビーバーという動物がどんな動物なのかを電子黒板に写真を映してイメージ化する。

②小さな動物なのに、川にダムを作り上げ、そこに大変立派な自分の巣を作ることを知らせる。ビーバーの能力の高さを心にとめる。

③もしも川の増水で巣やダムが流されたらビーバーはどうするのかを考える。そして何度でも全く同じ巣を作り上げることを知る。

④もしも人間が災害で自分たちの家が壊れたら、次はどうするのかを考え、ビーバーと人間を比較する。

⑤ビーバーは「本能」で巣を作るが、人間は「学習」によってより良いものを作る。このことに子どもたちが気づけるようにナビゲートする。

⑥子どもたちが人間の素晴らしさを感じられるように意見交換をファシリテートしていく。

⑦授業の感想を書く。

⑧感想を交流する。


(2)子どもたちの様子

①ビーバーのことをあまり知らなかったので、その巣作りの習性を知った時は、素直な驚きがあったようだ。そんなすごい生き物がいるのかとビーバーの能力の高さに感心していた。

②ところが作った巣やダムを流されても、ビーバーは悲しまないし、驚かないし、何も考えることはないだろうという意見を引き出し、そのことを子どもたちの頭の中でイメージ化していくと、何人もがニヤニヤと可笑しそうにしていた。河原で流されたダムを見ながら“ボー”“ホゲー”っとしているビーバーの姿が目に浮かんだようで、オモシロカワイさに思わず笑ってしまった感じだった。

③ビーバーと人間の違いを比較していった時に、人間の「学習する力」に気づき始め、目の色が変わっていった。自分たち人間の力はすごいし、これまでに人類の文化を作り上げてきてくれた先人への感謝の意見まで飛び出した。

④感想を書く10分間は、まさにフロー(深い集中)状態だった。

⑤感想交流でも、普段は発言をするのが苦手な子まで、自ら感想発表した。


(3)子どもたちの感想

「確かにビーバーはすごく高い能力を持っているけど、それを本能的にくり返しているだけで、おもしろいような、かわいいような、かわいそうな感じでした。私たち人間は、同じ失敗をくり返さないように学習してきたので、今のこうした生活にガスや電気があるんだなぁと思いました。」

「最初はビーバーは巣を作れてすごいと思っていたけれど、ビーバーは巣が流されてしまった時に、また同じ物を作ると聞いて、あんまりすごくないなあと思いました。なぜなら人間は、家がこわれたら、次はこわれないような家に住もうと考えられるからです。他のくらべると、考えることのできる人間もすごい生き物だなと思いました。だからやっぱり自分は人間でよかったと思いました。
 ビーバーに考える力があれば、もっと楽にくらせるのに、なんで考える力がないんだろうと思いました。人間は考える力を悪い方に使わないようにした方がいいと思いました。」

「人間という生き物はすごいと思いました。ビーバーは本能で巣を作るけど、人間は本能以外でいろんな事が出来るのがすごいと思いました。火を起こし、電気を人工的に生み出し、石油をほり当て、さまざまなエネルギーを生活に活用し、快適にくらしている人間がすごいと思いました。
 火を起こすのも、他の動物には出来ない事なのに、今はガスで簡単に火がつきます。最初の人間は火の起こし方は知らなかっただろうけど、学習して火の起こし方を知り、今は宇宙に行けるまで学習を重ねてきた人間は、とてもすごいと思いました。快適に暮らせるのは奇跡みたいな事だなと思いました。」

「始めに巣作りの様子を見た時は、すごく頭がいいと思いました。でも、台風や嵐がきてこわれてしまっても、また全く同じ巣を作るということを聞いて、自分で考えて動いているのではなく、ただたんに本能がすごいんだなと思いました。
 それにくらべて人間は、地震などの災害で家などがこわれてしまったら、次にきた時にこわれないようにするためにはどうしたらいいのかなどを考えます。なので人間は、1回1回学習して生きているんだなと思いました。」

「ビーバーは巣をつくる能力が高いけど、こわされても感情がほとんどなく、学習もせずに同じ物を作るなんてふしぎだなと思いました。でも人は作るのに時間がかかるけど、考え工夫し、二度とこわれないように学習するので、人はすごい動物なんだと思います。人は何千年も前から工夫をつづけてきて、今、コンクリートやビルなども建てられるようになっていて、その進歩の仕方がとてもすごいと思いました。
 今、自分がコンクリートの家に住めるのは、あたりまえだと思っていたけど、ほんとうは昔の人の学習のおかげだと思います。」
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