近鉄奈良線撮影で午前中から汗まみれになる前に、いつもお世話になっております「ぱれっと」様からかねて伺っていた驚きと興奮の路線バス・奈良交通押熊線を初体験してみました。近鉄の大和西大寺駅北口から出ているこの路線、路線バス趣味界では夙に大御所クラスの濃厚さで知られているとか。何でも、ごくフツーの大型路線バス車両が問答無用でメチャクチャ狭い生活道路に突っ込み、限界ギリギリの直角カーブを切るなどのスペクタクル満載でありながら、最高にマイナーな免許維持路線かというとそんなことは決してなく、生活路線として立派に一定の本数を保っているとのこと……。そこで地図を参照してみますと、なるほどこの路線は県道の旧道になるべく忠実にルートが引かれていることが分かるものの、地図で見るだけでも狭そう……(汗)。それでいて、奈良交通HPで時刻を調べてみますと、確かに朝約10分間隔、日中20分間隔という使い勝手の良さ。
そこで、「これはもしや……朝の10分間隔アワーに乗ってみれば、それこそ緊張感にあふれたバスどうしの離合も頻繁に見られ、路線バス趣味の奥義の片鱗に触れられるのだろうか?」と思いまして、京都で開かれた会議でのハードなプレゼンテーションを無事終えた翌朝、7:15発の賢島行きビスタカーに乗って勇躍大和西大寺を目指したのでした。残念ながら、予約したビスタ2階席の近くには、会話の内容から志摩スペイン村に行くことがバレバレな女子大生8人組が乗っており、口から生まれたかのようなやかましさには辟易させられましたが、一人だけめっちゃカワいかったのでまぁ許す、と (そういう問題かいな? ^^;)。大和西大寺ですぐにおさらば、という気楽さも「まぁえぇわ」という気分になる一助ではありましたが、もしこの日の予定を伊賀鉄再訪と定め、名張まで予約していたとしたら……(汗)。
それはさておき、大和西大寺で下車後、朝のラッシュアワー真っ最中ということで人がワンサカ行き交う駅コンコースや駅前広場の光景を眺めるにつけ、そこが超濃厚なバス路線の起点であるとはとても信じられない気分……。駅前広場に何気なく停車していた押熊行きバス(1枚目。平城遷都1300年記念の看板もちょうど良い記念に ^^;) も、ごくごくフツーに奈良交通の標準塗装大型バス。シンプルな塗装に鹿のイラストが実に好ましく、如何にも気品良く古都をのんびり走るかのような風情しか感じられません。これが……本当にデンジャラスな狭隘路線へと突っ込んで行くのでしょうか??
しかし……いざ乗り込んでみると、運転席には常時ONの無線が置かれ、この路線を走る他のバスからの現在位置情報が逐一生中継されている状態で、特定の行き違い場所にて如何に互いのタイミングを合わせるかに重点を置いていることが見て取れます。運賃表示器もオフにされ、その代わりに押熊線のみの運賃表が掲げられておりますので、「まさか何気にこのバスって特殊仕様?」と思ってみたり……(あるいは、走行中に運賃表示器を操作する余裕はないということなのでしょうか?)。
というわけでいざ発車! 近鉄京都線の踏切を通過してしばらくはごくフツーの道を走っておりましたが、突如「へ?何でそっち行くの?」としか思えない細い道へと右カーブ! どう考えても古い集落の細い袋小路としか思えず、対向車との行き違いは絶対に不可!な道をグングン進んで行くではありませんか……。そして極めつけは秋篠寺(某宮家号の由来でしょうか?)界隈でのダブル直角カーブ!! 慎重に曲がらなければ絶対にケツを民家の壁にぶつけるだろう……としか思えないところを、運転士氏はノリノリでハンドル操作! 営業所の中でも格別に高い技量を誇る運転士がこの路線を担当しているのだと思われますが、いやはや、プロ魂あふれる鮮やか過ぎるハンドルさばきには敬服の限りです……。
その後、平城中山南口の前後ではやや広い道を走ったものの、平城中山で古い石橋を渡ったあとは再び狭隘な道へ! かなりヤバ目な場所には交通指導員氏が立っているほか、対向の自家用車もバスを見かけるや否や脇道へと待避し、バスの順調な運行に協力しているあたりは見事。終点の南押熊~押熊界隈は、古くからの集落がそのまま残り、街歩きの魅力を秘めたところのように見受けられますが、そんな「古都の小道」そのものなところにもバスが! 鎌倉あたりでは絶対に有り得ない光景にびっくり仰天です (^^;)。
こんな感じで片道10数分、走行写真をちょこっと撮ってから大和西大寺駅行きに乗って戻っても計1時間弱という小さな旅ではありましたが、短時間にハラハラする光景がギッチリ凝縮されてお腹いっぱい (^^;)。利用者は多く、廃止ということは当分ないでしょうが、県道の新道など近くの幅の広い道にルート変更……とはならないことを祈るばかりです (^^;