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ミステリ感想-『扼殺のロンド』小島正樹

2010年03月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
工場の壁にぶつかり、ドアが開かなくなった事故車。中には腹を裂かれた女と、無傷で死んだ男。直前にすれ違ったドライバーは二人とも生きていたと証言し、さらに男の驚くべき死因が判明して捜査は混迷を深めた。さらに第二、第三の密室事件が追い打ちをかけ……。


~感想~
やりすぎな作風で知られる作者だが、今作では冒頭の事故車の二重密室を核に据え、矢継ぎ早な解決は控えどっしりと構えてみせた。
しかし章が新たまるごとに完全無欠の密室事件が起き、興味を引きつけるのは流石。トリックも数を絞っただけはあり、どの密室も奇想と意外性に満ち、しかも密室を解くことで他の密室の謎を解くヒントとしても機能するという無駄の無い構成が光る。
白眉はメインの事故車の密室で、とんでもないトリックで驚かせてくれる。ネタバレを避けながら触れると、並の作家ならば「腹を裂かれた女」の謎だけで満足するところに、その謎と密接に絡み合った「無傷で死んだ男」を用意する(あるいは用意できることに気づく)のが、この作者が並ではないことを示している。
あとはインパクトのある探偵役さえ作れればいつでもブレイクできるだろうが……。


10.3.8
評価:★★★★ 8
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