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ミステリ感想-『姫君よ、殺戮の海を渡れ』浦賀和宏

2014年10月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
糖尿病の妹が群馬の川で見たイルカを探すため、妹や友人の飯野とともに現地へ向かう敦士。
ところが町の人々は不審な様子を見せ、隠された秘密をうかがわせる。
やがて彼らがたどり着いた真実は、悲痛な運命の扉を開く。


~感想~
「群馬でイルカを見た」というファンシーな滑り出しからは予想もつかない、浦賀作品らしいケレン味あふれる真相へと至る。
中盤で唐突に他シリーズと絡みだすが、それはこのトンデモな結末を作中での現実に落とし込むための装置にすぎないので、他シリーズを読んでいなくても大丈夫。
最近は「桑原銀次郎シリーズ」で地に足の着いた硬質な作品を出していたが、久々に浦賀らしい飛躍を見られてうれしい限り。が、千枚超の分量はさすがに多すぎた。このほとんど一発ネタがこれだけ長大である必要は絶対ないし、贅肉の多い長文となると浦賀はやはりそこまで文章も心理描写も上手くない。
しかしこのすさまじい真相は一見の価値あり。俺達の浦賀は健在だと改めて感じた。

余談だが帯には「切なく哀しい衝撃のラスト!」と書かれていて確かに衝撃ではあるがこいつ絶対読んでないだろ。


14.10.24
評価:★★★ 6
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