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ミステリ感想-『魔球』東野圭吾

2015年12月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
弱小校を甲子園まで導いた天才ピッチャー須田武志。
9回裏2死満塁、彼が最後に投じた魔球が全ての始まりだった。
大会後、バッテリーを組んだ捕手が犬とともに殺され、事件の裏には魔球が見え隠れする。

88年このミス18位、文春10位、85年江戸川乱歩賞候補


~感想~
東野小説によくある、一息に面白く読んだものの感想が全く思いつかない作品。
展開、伏線、真相、解決、物語と過不足なく、もし減点方式で採点すれば高確率で90点をオーバーしてしまう東野作品だが、本作も実質デビュー2作目とはとても思えない恐ろしいまでのそつなさで、早くもベテランの風格が漂う。
だからといって物足りないこともなく、いくつもの事件が意外なつながりを見せ、些細な着眼点から真相が浮かび上がり、その裏には悲哀が漂う、もしミステリ作家養成学校があれば教科書として採用すべき、素晴らしい仕上がりである。
まあ取り立てて褒めるべき長所は特にないのだが、それもこれだけ欠点のない作品に無理やり欠点を探しだす、窓の桟を指でなぞり埃を集めるような行為であり、言うだけ野暮というもの。
読んで損するはずもない佳作である。


15.12.23
評価:★★★ 6
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