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ミステリ感想-『秘密』東野圭吾

2016年04月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
杉田平介はバス事故で妻を亡くし、娘も意識不明の重態に陥る。
妻の葬儀の日に娘は目を覚ますが、彼女の中には妻の心が入っていた。
平介と妻の心を宿した娘との奇妙な生活が始まる。

98年このミス9位、文春3位、日本推理作家協会賞、直木賞候補、吉川英治文学新人賞候補


~感想~
映画版は「娘の姿をした妻を抱けるのか?」とか下世話に煽っておいて、二人が裸で同衾しているシーンをCMで普通に流すというネタバレっぷりで笑わせてくれたが(お、同じベッドで裸で寝てるだけだから(震え声))原作は設定だけで勝利確定の魅力的な物語で、作者が当初は笑える話を目指していたと言う通り、精神年齢36歳の小学生が苦心惨憺し、父兼夫がそれに振り回される日常風景がまず面白い。
だが娘の成長につれ次第に悩みが増えていき、現実的な苦悩にさいなまれ日常に陰が落ちてからは、一転して暗い雰囲気が立ち込める。
そして終盤、ある急展開を見せると、それから逆算して真相が見え見えとなり、ここしかないという結末に落ち着き、ミステリ馬鹿からすると予想通り極まりないものなのだが、読了後に各地の感想をあさった所「どいつもこいつもピュアか」という感想を述べており、そもそも仕掛けよりもあるカップリングに疑問を抱いている様子。
さすがは国民的作家になりかけていた東野圭吾、ミステリ馬鹿のみならず多方面から読まれているようで、それはそれで喜ばしい限り。

間違いなく良作ではあるが、意外性というものがほぼ皆無の展開を見せ、綺麗に決まっているが物足りない結末を迎えるため、おそらくミステリ馬鹿よりも一般的な読者の方が楽しめることだろう。
日本推理作家協会賞は……まあ、別に本格オンリーの賞ではないし、多方面から支持されたなら妥当ではなかろうか。


16.4.22
評価:★★★ 6
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