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ミステリ感想-『不安な産声』土屋隆夫

2016年07月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
人工授精の第一人者で知られる大学教授が強姦殺人で逮捕された。
だが東京地検の千草検事は被害者の状況から強姦は偽装であると推測。
なぜ地位も名誉も備えた彼はやってもいない罪を被るのか?
千草検事に宛てた教授の上申書は驚くべき真実を明かす。

89年文春1位


~感想~
文春ランキングで1位を飾ったが、まあまあ魅力的な謎が中盤でほぼ全ての真相が明かされ、あってもなくてもいいようなアリバイ崩しを経て、だいたい予想通りの結末を迎えるため、本格ミステリとしての旨味は無いに等しい。
物語の展開も終始予想の範疇を出ることはなく、上申書の形で語られることと、確かな文章力以外には見るべきものは少なく、総じて地味な作品である。

一方で作品を取り巻く周辺事情は面白く、89年のこのミスは、文春の1~6位までのうち4作品を21位以下に追いやるというギラギラしたランキングだったが、作者9年ぶりの長編(にして実は千草検事シリーズ最終作)を蹴っ飛ばすとは良い度胸だし、いかにも文春ウケしそうな北村薫「空飛ぶ馬」が11位以下というのも実に興味深い。


16.7.5
評価:★★☆ 5
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