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ミステリ感想-『月輪先生の犯罪捜査学教室』岡田秀文

2016年10月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
名探偵・月輪龍太郎は東京帝大の講師となり3人の学生に犯罪捜査学を教える。
密室状態の屋上から消えた男、奇妙な侵入者と幼児誘拐、怪談の残る異人館で発見された死体、舞踏会のさなかの狙撃。
題材に採られるのはいずれも未解決の4つの事件。


~感想~
シリーズ初の短編集。4編揃って個性的な3人の学生それぞれが一定以上の質を保った推理を披露し、月輪がそれらを上回る真相を見抜く、推理にこだわった大変な労作ながら、その手法にいささか問題ありと言わざるを得ない。
↓以下ネタバレ↓
というのも4編全てが単独犯ではなく複数犯で、連携プレーによる役割分担で不可能状況を演出しているのがまず難点。
解決編になって初めて名前の挙がるぽっと出の共犯も多く、また1~3編目はいずれも犯人が別の人物に成り済ましていたというトリックで食傷気味。

さらに解決編になって急に出てくる情報や証拠も少なくなく、極論を言えばこの手法なら器用な作者の手にかかればいくらでも事件が作れてしまうだろうと苦言を呈したくなる。

とはいえ三者三様のハズレ推理と月輪の本命推理は、いずれもキャラに沿った個性的かつ質の高いものであり、その推理の面白さだけでも十分に楽しめるものではある。
次回作があれば難点を解消してきてくれることを願うし、それが可能な力量を持っている作者なのは間違いない。


16.9.27
評価:★★☆ 5
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