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ミステリ感想-『屋上の道化たち』島田荘司

2016年10月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
かつて隆盛を極めたプルコの看板が見下ろす銀行ビル。
不幸な晩年を送った女優の遺物である盆栽が敷き詰められた、その屋上から次々と身を投げる行員たち。
うち2人は結婚や出産を控え、自分は絶対に死なないと直前に言い遺していた。


~感想~
明確にグ●コをモデルにしたプルコへの恨み節で幕を開け、関西人が読んだら激怒しそうなエセ関西弁ででんがなまんがなまくし立て、大丈夫なのか御大と思っていたら急転直下で「幽女の如き怨むもの」が始まる怒涛の展開に笑った。
連続飛び降り事件が始まってからは息もつかせぬ展開ながら、だいたいの裏事情が語られていき、久々に読者への挑戦状が出されたあたりでは、真相におおよその見当が付いてしまう。
というのも御大の近年の後継者と言えば河合莞爾だが、伏線や描写が丁寧すぎて、真相が常に丸見えだという氏の瑕疵を、なぜか御大も踏襲してしまい、答えそのものを書いている親切設計で、気づかない方がどうかしているというもの。
しかし描写のほとんど、周囲で起こる小事件のことごとくが一つの事件に収斂していく手管はさすがで、いかにも御大らしい豪快なトリックも炸裂し、御手洗シリーズの長編としての最低ラインは悠々と超えているだろう、佳作であることは間違いない。


16.10.27
評価:★★★ 6
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