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ミステリ感想-『ブラッド・ブレイン』小島正樹

2016年10月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
留守電や天井裏から聞こえる娘の声、拘束され彫り傷と血文字で「暗」と書かれた刺殺体、天誅と称し悪漢を襲う男達……。
警察からも特別待遇を受け、卓越した頭脳で現場に赴かずに謎を解く月澤凌士は、過去のある事件から「闇の探偵」と呼ばれていた。


~感想~
スピッツかな? というカバーイラストは置いといて、流石のやりすぎコージー(※僕は深水黎一郎より先に命名している)も今回はおとなしめで、冒頭の「悪魔の声」をはじめ、出くわす事件をことごとく速攻で片付ける手際はいつも通りだが、デビュー初期のあの頃よりもだいぶ落ち着いた筆さばきで、トリックや事件の数を絞ってきた。
絞ってきたといってもそこはやりすぎコージー、ノベルス版209ページの作品としては過剰なトリック数で、そこは別にトリックを仕掛けなくてもいいのではと思うような日常パートにまで密室や不可能状況を設けては、即座にそれを解決してみせるあたりは流石。
真相こそ多すぎる事件で次々と容疑者が消えていき、おおよそ見当の付いていたところに着地するものの、新シリーズの開幕作、もしくはそれに見せかけた単発作品としては十分に合格点を与えられる、意外さとまとまりの良さを合わせ持った佳作である。

ただしあらすじ等で思わせぶりにほのめかしている「闇の探偵」についてはものの数十ページであっさりその正体が明かされ、珍しいけど特に驚きはないいたって普通の設定のため、さほど期待しないほうが吉である。


16.10.22
評価:★★★ 6
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