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ミステリ感想-『まほり』高田大介

2020年03月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大学生の勝山裕はゼミ生から聞いた怪談に、自身の出生の秘密につながる要素を見出し調査を始める。
図書館で再会した塾生の飯山香織とともにくだんの山村に向かい、数々の史料に当たるうち、陰惨な過去と奇妙な因習に行き着く。

2019年このミス19位


~感想~
まず分厚い本ながら、作者は言語学者ということもあり、初めて見るような難解な単語や言葉遣いが散見され、ミステリとして解くべき謎は特に現れず、その合間にラブコメ風に主人公カップルはいちゃつきと、いったい何に付き合わされているのかわからなくなり、リーダビリティはよろしくない。
自分は歴史大好きなので、実在する豊富な史料に当たりながらの史学の講義はなかなか面白く読めたが、それでも大半は読み飛ばした。
物語が急展開するのは終盤のことで、そこでも急にどうした?と聞きたくなるほど筆に酔って昭和の冒険譚みたいな大上段に構えた文章が飛び出すし、TRICKでもやらないような謎の因習が、それも差し迫った理由も無しに現れるので、呆気にとられる。
だが最後の最後に、残された数々の疑問や、もしや次回作に続くんじゃなかろうかと思われた危惧を、まとめて吹き飛ばすある真相が明かされ、同時に山のように膨れ上がっていた不満もだいたいが霧散した。
なるほど、このミス期限ギリギリの10月に出版されながら、このミス19位に滑り込んだ原動力はこれだったのか。
そこに至るまでの過程が山あり谷ありというか、延々と続くきつい上り道なので、読む人は大いに選ぶものの、読了さえすればとりあえず一通りの満足は得られるだろう。
読むのも書くのも実に骨が折れる、すさまじい労作である。


20.2.29
評価:★★★ 6
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