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ミステリ感想-『カインの子どもたち』浦賀和宏

2020年03月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
立石アキは死刑確定から40年以上拘置されている死刑囚の孫で、両親は冤罪を訴え熱心に運動しているが、アキは祖父との面会も拒むほど複雑な感情を抱いていた。
そんな彼女の元を、同じく冤罪を訴えていた別の死刑囚の孫でジャーナリストの泉堂莉菜が訪れる。


~感想~
今回も明言されていないが「Mの女」、「十五年目の復讐」に続くシリーズ第三弾。
しかも前二作は幻冬舎から刊行されていたが、今回は実業之日本社からの出版である。特に喧嘩別れとかしていなかったはずだが、シリーズ完結編だけ版元を変えるな。自由か。

もっとも作者の急逝により本当に完結編なのかは永遠にわからなくなってしまったが、三作で話はまとめられており破綻は無い。だが安藤直樹シリーズの登場人物が顔を出しているそうで(※全作読んでいるが昔過ぎて全く覚えていない)2つのシリーズが合流する構想もあったのかもしれず、つくづく惜しまれる。

本作の話に戻ると、前二作の裏側を語るもので、主役格の泉堂莉菜の人物が掘り下げられる。
当然ながら前二作のネタバレを多く含むため必ず出版順に読んでもらいたい。
ミステリ的な技巧もあるにはあるが、前二作ほど熱心ではなく、シリーズの背景を物語るのが主眼であり、そっち方面の期待はしないほうが吉。読後感は桑原銀次郎シリーズに近いだろう。
シリーズ前二作を読んだなら黙って読むべきで、版元も違えばシリーズ作品だとも書かれていないので、未読の方はくれぐれもご注意を。


20.3.31
評価:★★☆ 5
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