介錯は俺がする、と阿南陸軍大臣に持ちかけた右翼がいた。戦前から活動して何回も刑務所を出たり入っていたりした三浦義一である。戦後は右翼の最高実力者と言われるまでになった。
阿南陸相は終戦の日に自決しているから、その前に各方面で終戦工作が行われていた戦争末期のことであろう。東条を説得してホワイトハウスに連れて行き切腹させる。そして介錯は自分がすると軍部に持ちかけたらしい。結局軍部が乗ってこなかったというのであるが、まず当たり前のことだろう。右翼というのは一人一党的なところがあって随分と独創的というか突飛なことを考えるものだ。
この話は本人が自慢したものか、あるいはそんな噂があったのか。右翼問題のジャーナリストとして活躍している猪野健治氏の本のなかにある。32年前に出たもので、今年出版された、ちくま文庫「日本の右翼」に収められているから、関係者の間に定着している話なのだろう。
この話を読んで戦国時代の話を思い出した。秀吉が中国のどこかの城(四国だったかな)を兵糧攻めにした。ろう城側がまいってしまって、大将が切腹するから、家来をこれ以上いじめないでくれといった。結局城の前の海か湖に浮かべた船の上で大将が切腹して、その前に浮かべた船のうえから秀吉が検死をするという話だったと思う。
ところで、日本の人物で戦時中アメリカにおけるマスコミ漫画に一番多く登場したのは誰であろう。もちろん、悪役としてカリカチュアされた東条首相であろう。ほとんど毎日登場していたのではないか。それほどではないにしてもアメリカ国民に対する露出度は小泉首相の比ではなかったろう。 三浦義一のアイデアは強烈なインパクトを与えただたろう(実現しっこなかったが)。
ブッシュ・ジュニアが来日したが、小泉首相との相性のよさをテレビで見るに付けても上記の話と比較して今昔の感に堪えなかった次第であります。