WTOの多角的交渉(ドーハラウンンド)が決裂した。2001年にドーハで開催されてから、幾度かの経過があり、2008年の妥結を目指していた。
表向きはアメリカと中国、インドそれにブラジルが対決し締結に至らなかったとなっている。アメリカは、ブッシュが引退するばかりか、どうやら民主党政権になることをにらみながらの熱意を欠く交渉だった。
農政通の大臣が自殺したり失脚したりして、当時の環境大臣がとりあえず兼任の後を引きずって就任した農政のど素人の若林農水大臣などは、自分が責任を負わなくってホッとしていることだろう。
インドやブラジルは、後進国の代弁をしてるだけである。自国の発展の途に就いたばかりの工業を守り、零細な農業を保護する姿勢を明確に打ち出しただけである。先進国、経済大国への反発である。
日本は、何故これができなかったのか? 世界第2の経済大国(当時は)は、発展を工業製品 の輸出で支えていた。日本車やラジカセをたたき壊すパフォーマンスを見せつけられながらも、エコノミックアニマル日本は黙々と外貨を稼ぎまくっていたのである。
その陰で、日本農業は大きく犠牲を強いられる結果になっていた。都市労働者は賃金が高くなり、農村労働者を吸収していった。土地は極端に上昇し、高い成長率が求められ、米の生産が押さえ込まれ、日本の食料自給率が極端に下がったのは、当然の結果であるといえる。
日本の、目先の利益に飛びつく選択を教訓化したのではあるまいが、今回のドーハラウンドでの、後進国の主張はそうした意味からも、当然のことと言える。
小泉・竹中新自由主義者たちが主張する、「自由貿易が、人々を豊かにさせて幸福をもたらす」というのは、絵に描いた餅である。環境を悪化させ、各国での食料の生産を危うくさせる。工業製品と同様に農業製品(食料)を扱うからである。
環境や食糧それにエネルギーは7年前とは全く異なる状況にある。今回の決裂は、時代の流れでもあり、後進国が台頭してきて自己主張した結果でもある。これでいいのだ。