前原外務大臣の「日本のGDPに占める第一次産業の割合は1.5%で す。残りの98.5%が犠牲になっている。農民の平均年齢は65歳である」との発言は、かなりのインパクトを持って、マスコミに取り上げられた。この僅か1.5%の農産物生産が低い原因の一つが、農業者の手取りが少ないことにあると、農業者からの見方が少ないのが気になる。
GDP量は金額である。日本の農民は僅か1.5%の報酬、対価しかもらえないが、国内消費量カロリーの40%も生産しているのである。昨日も書いたことではあるが、食料を必要としない人間は存在しない。この数字は、国民は正当な対価を農民に払っていない証しである。
前原発言は、都市と農村の対立構造も際立たせる結果になっている。地方は都市に食糧に限ることなく、水や空気それに人的供給を通じて、経済的発展を支えてきたのである。長年培ってきた豊葦原瑞穂の国の、勤勉な民族性と村社会の共同体意識は、経済成長の日本の会社・産業を支えてきたのである。
それでは、犠牲になっているとされる輸出産業であるが、これも僅か17.5%に過ぎないのである。韓国は80%にもなる純然たる貿易立国である。農業を切るのには事情がある。それでもコメだけは守ったのである。そのためには、全ての関税を撤廃するTPPではなく、個別交渉となるFTAを多くの国々と結ぶ努力を連綿とやってきたのである。
この間日本は何をしたかと言えば、毎年のゴタゴタと無責任な政権投げ出しで、何度も首相を挿げ替える消耗戦を繰り返してきたのである。韓国が大統領制ということなる体制であることを考慮しても、いかにもおぞましいこの国の政治体制である。
限界集落は6000を超えるとされている。高齢化はへき地から始まる。就労農民の平均年齢が65歳であるのは、この国が怠ってきた農業政策の残像であると言える。
TPPは自給率の向上にも反するし、国家の根幹たる食料生産の放棄をさらに加速させることになる。TPP参入は天下の愚策と言える。