前原誠司外務大臣が、「日本のGDPに占める第一次産業の割合は1.5%で す。残りの98.5%が犠牲になっている。農民の平均年齢は65歳である」と、日経などのシンポジュウムで発言をした。この発言のインパクトはかなり大きく、多くの国民を、TPPやむなしへと走らせた感がある。
これには大きなまやかしと数字のトリックがある。それではアメリカ農業の国内のGDPに占める割合はと言えば、1.5%であり、同じく農産物輸出国のフランスでも1.8%である。ドイツとイギリスは0.8%である。これらの国はほとんど食糧を自給している。
それではTPPで躍進するとされる日本の自動車産業(輸出産業)はと言えば、2.7%である。車は必要としない人たちもいると思われるが、食料を必要としない人はいない。これらの関係が、ほぼ倍近い関係であることが正常だとは思えないのである。
TPP参入推進を唱える輸出関連産業に限ってみても、GDPに占める割合は17.5%に過ぎない。GDPという得体の知れない、金の動く量を基準で特定の産業を捉えて、産業構造全体を論議しないのがおかしいのである。
農業関連産業の幅を広げて見ると、食品工業、流通産業、飲食店を全て含めると、GDPに占める割合は、9.6%にもなる。自動車関連産業の実に3.56倍にもなるのである。更に就業人口は775万にもなる。TPP導入による無関税の輸入品の受け入れによる混乱は、就農者よりも関連産業の方が大きいと思われる。
更にもう一つの論点であるが、農村が高齢者ばかりにしたのはどうしてかを検討するべきなのである。健全な発想なら、農村の高齢化問題を真剣に検討するべきであって、今すぐになくなってしまうものに金をつぎ込むのか、我々を犠牲にするのかというあらぬ方向へと導く論議は、健全ではない。前原発言は特定の方向付けを考えた、無責任なまやかし論であると言える。
左のフォトアルバムに<凍らない屈斜路湖>をアップしました。