NHKの日曜討論を聞いた。賛否両論者を抱える民主、自民の政治家がいなかった分、かなり深い論議がされた気きがする。政権内ですら論議が分かれ、論議すらできない現状である。出席者はTPP推進派の太田弘子、伊藤洋一反対派の金子勝、鈴木宣弘の研究者評論家の4名だった。
TPPがこれまでの自由貿易協定(多国間・二国間)と全く異なるのは、関税の全面的な撤廃である。このことを推進派の2名は正確に理解していない。徐々に撤廃されることになるといくら説明しても、撤廃されることには違いない。推進派の論議は、輸出産業が高まり農業が衰退するとするとする2元論にとどめたかったようである。TPPは関税撤廃に限らず制度の共有も入っている。
太田氏は韓国がすでにFTAを多くの国と締結することで、TPPに参加することになるとする見解に、鈴木氏が一蹴する場面があった。韓国は基本的に農業を捨てて、すでにGDPの80%を占める輸出産業に移行する決断をしたのである。そうした中でも、コメだけの例外を設けているる。それがFTAなのである。農業投資も国外に農地を求め、企業支援を行っている。韓国の対策は日本に当てはめるわけにはいかない。
菅政権がTPP参加を打ち出したと聞き、自民党時代に経済産業相を務めた太田氏がもろ手を挙げて喜んだというのが、菅政権のスタンスを語っている。太田、伊藤両氏が、TPPには参加しなければだめなんですと、内容説明の前に一方的主張を何度か繰り返していた。推進派は国内産業をほとんど考慮していないことが解った。
TPP推進派の農業に対する認識不足には目を覆いたくなった。規模だけで農業の効率を考える、あるいは企業参入が農業を救うかの浅い認識しかなかった。農業参入した企業で、成功した例をいまだ見たことがない。6月にTPP参加を決定する混乱を推進派は認識していなかった。日本の食料自給に関する論議がふっ飛んでしまった無関税体制の導入について、全く認識がない。
世界の農業政策にについて詳しい鈴木氏の、EUをはじめとする政策的な援助など例にだし、全く論議しない政権を意義をとなえた。TPP参加をまず決めるのは、極めて乱暴な論議と断じた。
農村の最も大きな問題は、高齢化と地域の衰退である。自民党政権が票田と評価するほどであったが農家の数が減ると、平気で政策を都市機能、論理を優先させる政策をした結果である。その尻拭いすらやらないままで、TPP参加はいかにもノー政と言われるそのままである。
日本の農業や農村をよく知る金子、鈴木氏の論調に、推進派の2人が全く反論できなかったのが印象的であった。それでもTPPに参加することになるのだろうか。
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