今回のNHKのETV特集は「枯葉剤の傷跡を見つめて」というものであった。枯葉剤の遺伝的な問題は、ベトナムのベトくんドクくんの癒合した2胎児などで知られている。現在もその傷跡は大きく、手足の欠損や頭部の奇形が広く知られている。胎児の奇形は、次世代にまで及んでいる。しかも、現在も生まれ続けているのである。
さらに奇形児の障害はベトナムだけではなかったのである。アメリカ帰還兵やジャーナリストたちも、当然のことながら米軍が安全を補償をした、枯葉剤に何の防御もなく汚染されていたのである。アメリカは枯葉剤の催奇形性を認めていない。
枯葉剤の関連施設にいた帰還兵は結婚し子供をもうけたが、何らかの障害を持つ子供がたくさん生まれている。アメリカは未だに奇形児との因果関係を認めていない。1985年に訴訟があったが、1人当たり250ドルと言う信じられない和解金が出た程度である。しかも帰還兵本人に対してである。
国家が認めていないアメリカの、枯葉剤による奇形児たちは悲惨である。ベトナムのように国家が認めていないからである。アメリカは、ベトナムを忘れようとしている。事実すっかり忘れて、今またアフガニスタンにイラクにと、同じ過ちを犯している。「私は自分の子供まで戦場に連れていくことになるとは思ってみなかった」という、帰還兵の言葉を重く捉えるべきである。
番組は、肝臓がんで急逝したアメリカ人ジャーナリストの奥さんで、映像作家坂田雅子さんのレポートによって構成されている。彼女は子供がいない。枯葉剤による子供への影響を恐れ、設けなかったのである。
自分同じ指の奇形の子を、訪れたベトナムで合い涙する片足のアメリカ人の涙は哀しい限りである。彼女は、妊娠中に超音波で胎児の異常を確認したら堕胎するとするベトナム医師へ、強い反発をした。奇形でも私は生まれてきて良かったというのである。医師が、生存不能な脳などの障害に限ると補足すると安心したようである。
戦争は終戦で終わるものではない。戦争は国家が傷つくものではなく、国民が傷つくものだと思い知らされた番組であった。