篠原孝農林水産副大臣のインタビューを読んだ。記事は北海道地方紙「Hoppo Jounal」(北方ジャーナル)である。篠原氏は、農林省のお役人であったが、転 身して民主党から立候補して、現在3期目の衆議院議員である。いわゆる農政通と言うよりも、農業に対する本当の意味でのあり方を問い続けているという点で、評価されている。
自らも農家出身で「農的循環社会への道」や「EUの農業交渉力」等の著作が多い。「フードマイレージ」や「地産地消」等の言葉を創ったことでも知られている。異例の官僚と言える。彼が政権交代を受けて、農水省に乗りこむ日を待っていた。
本誌のインタビューは、民主党の農業政策が突如降って湧いたTPPといモンスターに、彼がどれほどの取り組みが出来るか、何を考えているか興味のあるものであった。結論から言えば、菅直人とその周辺の政府が打ち出す方針とは、彼の主張は多くの点で相いれないように思えた。
所々では、篠原氏は菅とのつながりは協調はするものの、菅の無理解に悩んでいる発言が目立つ。TPPまっしぐらに暴走する菅政権に、何はともあれ農の再生を手掛けることの重要性を、提言しているとのことであるが、具体的な内容が薄い。これまで興味深い政策を数多く実現している篠原氏であるが、矢張りTPPは大きな存在となって、彼は政権内で大きな動きが取れない印象は拭えない。
地産地消も小農の在り方も、あるいは食料の自給率向上すらも、TPPの大波に飲み込まれていくような気がしてならない。篠原氏の発言からは、明確に否定するような内容が見られなかった。それでいて地方の在り方には深い理解を示している。農村は本当に再生できるのか、これだけでは不安である。
タイムリーなインタビューであるが、北方ジャーナルでの扱いがいかにも低い。都会のスキャンダラスな内容や、統一地方選挙の内容を優先させるのは、本誌の良識が問われるところである。