同時多発テロ、9.11から10年経とうとしている。私たちは、大きな世界史の転換点をこの10年で確認することとなった。アメリカは、テロに 対して『報復』以外の選択肢を持たなかった。このことが最も大きな踏み外しと言える。
前回書いたが、96歳の老ジャーナリストむのたけじの言葉をもう一度確認する。
「誰かビン・ラディンに、お前さんがやったのかい? なぜやったのか? どうしたらもうやらないのか、誰か聞きに行ったジャーナリストがいるかい?」この問いが、すべてを物語っている。
フセインを殺害し、「世界はより安全になった」だろうか? ビン・ラディンを殺害して、テロがなくなっただろうか? テロで殺害される人が減っただろうか?
10年経って、イラク侵攻を強く支持した、当時のボルトン国務長官は「正義の戦争で、それは正しかった。アル・カイダが戦争を長引かせた」と平然と言ってのける。
アメリカの報復は、対テロとの戦いになった。そもそも、国家とテロ組織との戦争か可能なのだろうか。テロリストは兵士ではないので、国内法律で裁くことが出来る。人権などお構いなしである。アメリカの法律が及ばない、キューバのグアンタナモで拘束者の拷問が繰り返された。
最も悲惨なのは、中東各国で多発する自爆テロである。政情不安が一向に収まる気配はない。20人程度の死者では、記事にならないほどである。アメリカの報復戦争以前にこのようなことがあったであろうか?
民主主義の定着も、ブッシュは唱えていた。現状はそれどころではなく、アメリカの傀儡政権と汚職や賄賂の横行など、誰れも取り締まり出来ない。
テロの意味を問うことなく、軍事力による報復を繰り返すアメリカには、最早解決の糸口さえつかめず、混乱を残してイラクからそしてアフガンから、撤退のカウントダウンに入った。