そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

永六輔の死去を悼み思うこと

2016-07-11 | 集団的自衛権
永六輔氏が亡くなった。テレビの創世記にマルチな活動をされた、放送作家であり作詞家であり作家でもありディレクターでもあった肩書が、永さんの活躍を物語っている。永さんの最大のヒットは、”上を向いて歩こう”であるが、これは60年安保闘争の敗北のデモの帰りの道すがら作られた詩である。後に六八九トリオと言われたが、中村八大さんが曲をつけ、坂本九さんが歌ったのである。ビクターと東芝がレコード大賞を取り続けるとの批判でこの年の大賞から外されてたが、世界的ヒットになった間違いなく戦後最大の名曲である。
奇しくも、憲法に抵触する安保関連法案を提出した安倍晋三政権が参議院選挙で勝利した日に、訃報を聞くとは思ってもみなかった。また今日は5月に、ザ・ピーナッツの妹さんの方が亡くなられていたことも公表された。姉はちょうど二年前に亡くなっている。一つの時代が音を立てて去っていくことを身に重く感じた日である。
永六輔氏の詩で最も好きなのが、”黄昏のビギンで”ある。街角に街灯が乱立して無用に明るくなった現代、道端で平気で男女が絡み合う現代では理解できないであろうが、柔らかな電灯の光が人々に残されていた時代の美しい詩である。
午前中に車で診療に出かける仕事の関係から、永さんのラジオ番組の”誰かとどこかで”を長年聞いていた。彼は法廷での闘争もやっていた。メートル法が実施されたのはいいが、他の寸法を用いるのは同時に禁止したのである。尺貫法やヤードやマイルは使ってはならないとのお達しである。永さんは、主に職人のための鯨尺の使用を求めたのである。今でもNHKなど従順な報道は、スポーツ番組でヤードやマイルを、丁寧にメートルに置き換えて説明するのはそのためである。
栗せんべいを売っていた老夫婦を厚生省が咎めたことがあった。栗の入っていないせんべいの製造販売は不当表示になるというのである。永さんはこれを耳にし、ハトサブレには鳩が入っていないし、メロンパンはメロンが入っていないと反論し、老夫婦の伝統のせんべいを救ったこともある。
永さんは地方の出来事をきめ細かく取り上げていたた。職人や伝統を全国に求めて歩かれている。伝統芸能や言葉の起源とその意味を、人間の目線の立場から取り上げ説明をされていた。作家水上勉の残した一滴文庫を高く評価し支援されていた。地元では原発反対を表明していた、水上氏を足蹴にしたような扱いに、永さんは耐えられなかったのであろう。後半生はこうした旅を通じて、日本の伝統文化を紹介されていた。しかし、それも最近の過疎化・高齢化それに、小泉政権以来の新自由主義化の波で消えつつある。
巨大化するテレビ産業に抗するように、ラジオの番組を重視した。水族館では魚の説明だけではなく、同時に調理の仕方などもの展示するべきであるや、増えすぎた野生はとって食べればいいなどと、人間の現実の姿をはっきり言われていたことも印象的である。
自らの遺書ともいえる、「大往生」がミリオンセラーになったが、あれからでも20年も経つ。永六輔さんのご冥福を祈りたい。合唱
コメント (6)
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