詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

あのことば

2014-12-03 00:04:59 | 
あのことば

ノートにことばを書き散らしていく男のことを書いていたとき、
その男が、いま書いていることの三行目あたりで書かなければならない窓の描写の、
いちばん大切なことばが出でこないことを予感する。
何も起きないのだが、その起きないという同じことを、
窓の内側と窓の外側という違った視点で書くための、あのことば。
それからさらに先へ進んだところで男は、
出て来なかったことばを思い出したいと苦悩する、あのことば。

頭の中で血が沸騰して鼓膜のなかに響く。
ボールペンが勃起してインクが溶ける。

三日後にノートを開くと、熱かったことばが冷えて、
皿にこびりついた魚の脂のようにノートにこびりついて濁っている。
あのことばではないものが。



*

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