谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(25)(創元社、2018年02月10日発行)
「なんにもしたくない」の最終行は「歌うたうのももうやめた!」。それまでの行が「歌」になる。
「したくない」(正確には「たくない」か)が繰り返されている。声に出すと自然にリズムができる。これが「歌」か。「うたう」か。
「ジャズドのラマー」に、「われわれは人間の肉のリズムを拍ち、それに酔う」ということばがあった。「声」がリズムをもつと、やはり人はそれに酔う。どんどんことばがあふれてくる。
繰り返しは「したくない」だけではない。「カツ丼なんか」「友だちなんか」「女となんか」の「なんか」。それに「なんにもなんにも」もそうだが、「ないないづくし」の「ないない」「お日さまかんかん」の「かんかん」、「蝶々ひらひら」の「ひらひら」。よく見れば「蝶々」も「ちょう」の繰り返し。(「蝶」単独でも意味は同じだからね。)「それとも」も繰り返し。
しかし、
には繰り返しがなくて、リズムが変わる。それが「終わり」を予告しているかもしれない。
ここが、谷川の「本能」のような部分だね。
黙読していても、はっとするが、朗読ならば黙読よりもはっきりと変化がわかると思う。
ここに「音楽」がある、と言えるかもしれない。
「変化」もまたリズムの重要な要素だ。
「音楽」を知らずに育った私がいうと信憑性がなくなるが、谷川はどこまでも音楽的なのだ。
*
「詩はどこにあるか」2月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
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ここをクリックして1750円の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
目次
小川三郎「沼に水草」2 岩木誠一郎『余白の夜』8
河邉由紀恵「島」13 タケイ・リエ「飯田橋から誘われる」18
マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」再考21 最果タヒ「東京タワー」25
樽井将太「亜体操卍」28 鈴木美紀子『風のアンダースタディ』32
長津功三良『日日平安』37 若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」40
草森紳一/嵩文彦共著『「明日の王」詩と評論』47 佐伯裕子の短歌54
石井遊佳「百年泥」64 及川俊哉『えみしのくにがたり』67
吉貝甚蔵「翻訳試論――漱石のモチーフによる嬉遊曲」72
西岡寿美子「ごあんない」76
*
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(上)83
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
「なんにもしたくない」の最終行は「歌うたうのももうやめた!」。それまでの行が「歌」になる。
ああなんにもしたくない
カツ丼なんか食いたくない
友だちなんか会いたくない
女となんか寝たくない
話したくない聞きたくない
(略)
ああなんにもなんにもしたくない
お日さまかんかん蝶々ひらひら
どこかで赤ん坊が泣きわめく
いまは三月それとも四月
それとも真夏の昼下がり
歌うたうのももうやめた!
「したくない」(正確には「たくない」か)が繰り返されている。声に出すと自然にリズムができる。これが「歌」か。「うたう」か。
「ジャズドのラマー」に、「われわれは人間の肉のリズムを拍ち、それに酔う」ということばがあった。「声」がリズムをもつと、やはり人はそれに酔う。どんどんことばがあふれてくる。
繰り返しは「したくない」だけではない。「カツ丼なんか」「友だちなんか」「女となんか」の「なんか」。それに「なんにもなんにも」もそうだが、「ないないづくし」の「ないない」「お日さまかんかん」の「かんかん」、「蝶々ひらひら」の「ひらひら」。よく見れば「蝶々」も「ちょう」の繰り返し。(「蝶」単独でも意味は同じだからね。)「それとも」も繰り返し。
しかし、
どこかで赤ん坊が泣きわめく
には繰り返しがなくて、リズムが変わる。それが「終わり」を予告しているかもしれない。
ここが、谷川の「本能」のような部分だね。
黙読していても、はっとするが、朗読ならば黙読よりもはっきりと変化がわかると思う。
ここに「音楽」がある、と言えるかもしれない。
「変化」もまたリズムの重要な要素だ。
「音楽」を知らずに育った私がいうと信憑性がなくなるが、谷川はどこまでも音楽的なのだ。
*
「詩はどこにあるか」2月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
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目次
小川三郎「沼に水草」2 岩木誠一郎『余白の夜』8
河邉由紀恵「島」13 タケイ・リエ「飯田橋から誘われる」18
マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」再考21 最果タヒ「東京タワー」25
樽井将太「亜体操卍」28 鈴木美紀子『風のアンダースタディ』32
長津功三良『日日平安』37 若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」40
草森紳一/嵩文彦共著『「明日の王」詩と評論』47 佐伯裕子の短歌54
石井遊佳「百年泥」64 及川俊哉『えみしのくにがたり』67
吉貝甚蔵「翻訳試論――漱石のモチーフによる嬉遊曲」72
西岡寿美子「ごあんない」76
*
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(上)83
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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