風のこたろう

'05年4月6日~'07年4月7日 ウランバートル生活日記
'09年8月~  詩吟三昧の徒然日記

鵬の飛ぶ空、飛ばない空

2021年04月14日 | 詩吟
今、吟じる漢詩を選ぶとしたら、今までと違って、テキストの後ろから始めます。
私は、海が好きです。「海を望む」はことのほか好きです。
草原に立った時も、果てしなく広がる草原を海になぞらえて、小高い丘の上で馬に乗ってこの詩を吟じました。若いころからどの漢詩よりも多く吟じてきたから、気持ちよく吟じられるはずだけれど、一応、休憩のリストに入れようか。

誰かが「好きな詩」と耳に入ってしまったら、その詩は、選びにくくなるから、「躊躇」という付箋を付けて保留にしようか。
ご縁の薄い方の言葉だったら、付箋は付けないから、選びたい漢詩の数にそれほど影響はないだろうから。

テキストを眺めながら、「心頭滅却」私にはできないなぁ、折角夏の詩だけれど。

次は、酒をたしなまない私が、酒仙の詩はねぇ、この酒飲みさんの勝手さ加減は羨ましいが、、、羨ましい思いを託して詠う?いや、いや、いや。

その次のは、「真の男子」ーじゃないし。

こんな風に、漢詩を読み、初めての時を思い出したりするのは、楽しい。

次は、杜甫の「江、碧、青、赤、白」いいねぇ、でもこれは春の詩です。須藤先生の解説に、目から鱗の漢詩だったなぁ。
そうそう、「私の好きな詩」と宣言された詩は、仲良く吟じる時のために取っておこう。

ん?「太平洋」海だ。「太陽」「碧空」「海水」「洋々」「紫」「日」「鵬」「鯤」「白」いいねぇ!
やはり私は、作者より、好きな漢字から選ぶんだねぇ。

この詩は、H22年9月に、横浜で、習いました。10年のブランクの後、復帰直後は、10周年大会に、没頭し、その後は、新教室創設と忙しい日々だったから、見ないで過ごしてきたけれど。お休みの10年の間にずいぶんと詩の数も増えていたはず。そのことに思い至って、少々焦っていたときだった。


そして、その後、縁あって須藤明実先生に、初めてお話を伺ったのも、「空の蒼と鵬」のお話だったなぁ。
今度お目にかかる時に、あの時の蒼と鵬のお話を聞きたいものです。そして、理解を深めたら、もっと、漢詩が身に迫ってくるだろう。

もしこれを吟じるとしたら、先生は、良しあしは、おっしゃいません。「あなたなりの理解で、いいですよ。」「理解度は、刻刻に変わりますからね。」
「今のあなたを大事になさいませ。」と、おっしゃるでしょう。

作者の漢城が夢想した世は、鵬が九千里をかけ上ったあと、ゆったりと休んでいる様を言っています。
そしてその空の色は、碧々としている。(漢城は碧、須藤先生は、蒼と表現するのです。)

今のコロナの試練は、その背丈が何千里もあるという鵬が飛び立とうとして荒れ狂う海なのだろう。これを凌げば、静かな平和が来るはずです。


こんな雄大な詩を、吟じるのは至難の技です。安らかに過ごせるようにと心からの願いと、この試練を乗り越えて、碧空を仰ぎたいという思いで吟じるならば、何とかなるかもしれません。

そして、一たびかけ上ってしまえば、大きすぎて、おおきすぎて存在すらわからなくなるという鵬の加護がそこにあることをも忘れてしまうのだろう。

もし、そうだとしても、空の「あおさ」だけは、この目に沁みることでしょう。


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