熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

エルピーダが潰れるのも、被災地復興工事が進まないのも当たり前(1)

2012年02月28日 | 政治・経済・社会
   エルピーダが、会社更生法を申請したことにより、ものづくり産業立国の日本の将来に暗雲が立ちこみ始めた。
   DRAM価格の下落や韓国勢の攻勢をかわしきれなかったと言うのだが、まずもって、日本企業が直面している6重苦と一般的に言われている、円高、高い法人税率、自由貿易協定への対応の遅れ、製造業の派遣禁止などの労働規制、環境規制の強化、電力不足、と言ったような諸外国と比べて日本の事業環境が極めて不利となる、このように厳しいハンディを背負っておれば、当然の帰結である。
   経済産業省によると、2011年時点の法人実効税率は日本(東京都)の40.69%に対して、米国(カリフォルニア州)が40.75%、ドイツが29.41%、韓国が24.2%など。日本は法人減税と復興増税があり、12年度は38.01%になる予定だと朝日新聞は報じている。

   そのアメリカが、しびれを切らして、オバマ米政権は法人税改革案で、国際的に高水準にある連邦の最高税率を現行の35%から28%に引き下げると提案し、更に製造業は25%まで下げると言う。更に、サントラム候補は、17.5%を提言している。
   それに、最近、中国の人件費が高騰して、ドル安も加わって、米国での生産コストが下がって、国際競争力がついて来たので、中国に進出していた製造業が、米国回帰して来たと言う。
   弱り目に祟り目、20年も失われた時を過ごしてきた天然記念物のような日本には、もう、悲しいけれど、6重苦を跳ね返すことは非常に難しく、今のヴィジョンもリーダーシップも欠如した政府を頂いている限り、中々燭光が見えないのだが、このままでは、健全な日本企業まで見殺しにしてしまうことになる。

   まず、結論から言えば、日本企業が置かれている位置だが、今回のエルピーダのように、同じものを製造して国際競争を行っているような日本企業には、断トツのトップでない限り、特にモジュール型生産分野では、コスト競争力で勝つ可能性などはなく、ウィナー・テイクス・オールで、早晩、駆逐されてしまうのは目に見えていると言うことである。
   いまだに、日本企業の国際競争力の低下と業績の悪化は、円高の所為だとする見解が跋扈しているのだが、元気な時の日本企業は、ニクソン・ショック後の急速な円高や二度の石油危機にも革新に革新を重ねて、苦難を乗り越えて来たし、円高対策のためには何十年もの準備期間があった筈で、結局、あの時の活力と体力を消耗してしまったのである。

   前述した6重苦以外にも、この失われた20年間の間に、日本の政治経済社会そのものが制度疲労してしまい、時代の潮流に取り残されてしまって、熾烈極まりないグローバル競争に対応できなくなっており、その中で生きる日本企業の国際競争力は、トータルで著しく落ちてしまっている。
   日本企業で、国際競争場裏で成功を収めて利益を確保している殆どの企業は、中小企業も含めて、断トツの生産技術を誇り、市場占拠率の極めて高いオンリーワン企業が大半であることを見ても、このことが分かる。
   日本企業が、グローバル市場で勝つためには、破壊的イノベーションを追及して、オンリーワンの製品やサービスを開発して、ブルー・オーシャン市場を開拓しない限り、生き残る道はない。
   しかし、私自身は、企業を取り巻く経営環境が厳しくはなったけれど、優秀な能力とDNAを持ち、そして、素晴らしい経験を積み重ねてきた日本の企業であるから、経営目標と戦略さえしっかりして挑戦すれば、ブレイクスルーは必ず見つかるであろうと思ってはいるが、悲しいかな、時間が限られている。 

   尤も、これは、各企業の姿勢であって、政府が、積極的に6重苦を克服する努力をする必要があることは論を待たない。
   円高、高い法人税率、自由貿易協定への対応の遅れ、製造業の派遣禁止などの労働規制、環境規制の強化、電力不足、の殆どは、政府の施策によって改善することで、FTTと労働規制については、経済の活性化のためには、積極的に門戸を開放して市場の競争原理を働かさなければならないと言うことで、後ろ向きではなく、積極的に経済成長戦略を取らなければならないと言うことであろう。
   環境問題については、やはり、グリーン・イノベーションの追及であり、電力不足についても、再生可能エネルギーなど代替エネルギーへのイノベーションが必須であり、環境悪化を逆手に取った積極的な成長プログラムの推進である。
   年金問題など将来不安が国民意識に蔓延しているので、消費が伸びず、経済が停滞しているのだが、結局、日本の国民生活と経済を立て直すためには、経済成長を推し進める以外に道はないと言うことである。

   経済成長がなければ、国家債務が異常に高い日本が、将来の破綻を避けるためには、税金を上げたり国民から収奪するなどして財政を補填するか、国家資産を処分して収入を増やすなど、要するに、筍生活を余儀なくされて、国民経済の縮小均衡の道しか有り得ないのだが、日本人の殆どは、丁度、煮えガエルのように、少しずつ徐々に生活がひっ迫に向かっているので、それを意識できずに、自分の生きている間には、破綻はないと思っている。
   企業も、そうだが、国も同じで、成長が止まれば、衰退あるのみである。

   しかし、今回はエルピーダ、次は××××・・・、成熟国家になって経済に活力を失ってしまって、暗いニュースばかりが、次から次へ続き、良くなる兆しが先細って来ると、益々、世相が荒れる。
   年金も、消費税問題も、要するに、社会保障・税一体改革も重要な課題ではあるが、今こそ、国家が、真っ先に戦略を打つべきは、日本経済の成長で、これさえ前に進めば、例えば、余分に2%経済アップで、10兆円のGDPが増えて、これを10年続ければ、消費税アップなどしなくても済む。
   攻撃は最大の防御なりと言う諺があるのだが、悲しいかな、日本国は、撤退ばかりを繰り返している。










   
コメント
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