熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

持続可能な人類社会・・・ジェフリー・D・サックス

2012年02月08日 | 地球温暖化・環境問題
   先日、日経に、サックス教授のアディス・アベバでのエッセイ「Sastainable Humanity」が、多少省略して掲載された。
Project Syndicate の記事なので読んでみたら、冒頭から翻訳文が正確ではなく、ニャンスが大分違うので、私なりに約してみると、
   ”持続可能な発展とは、地球の生命維持に必要な資源を広く分配し、保護する経済成長のことである。しかし、現在のグローバル・エコノミーは、10億人以上の人々が、経済発展から取り残されており、地球環境は、人類の活動によって恐ろしい被害を受けていて、持続可能ではない。持続可能な発展のためには、共有された社会価値に導かれた新しいテクノロジーを動員する必要がある。”Sustainable development means achieving economic growth that is widely shared and that protects the earth’s vital resources. Our current global economy, however, is not sustainable, with more than one billion people left behind by economic progress and the earth’s environment suffering terrible damage from human activity. Sustainable development requires mobilizing new technologies that are guided by shared social values.
   サックス教授は、冒頭から、地球規模の貧困層の存在と地球環境破壊で、グローバル経済は、サステイナブルではないと明言している。

   続いて、サックス教授は、国連の「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル」のGSP報告について触れて、三つの柱、すなわち、極端な貧困の撲滅、経済発展によって得た富の社会全体への公平な分配、自然環境の保護について語り、これらを、持続的な発展のための経済的、社会的、環境的の柱、もっと簡潔に、持続可能発展の“triple bottom line”と称することが出来ると言っている。
   更に、サックス教授は、脱炭素社会から近年の異常な気候変動による大参事などにも論及しながら、人類を、特に、貧困層に、更に電力や交通利便を提供することは、不可能であり、解決策は、現在のテクノロジーを劇的に改善する以外にないと言う。

   現在のテクノロジーについては、半世紀以上も前に、ガルブレイスが、「豊かな社会」で説いていたように、たった一人の人間を運ぶのに1トンも2トンもの機械が必要なのか、とか、内燃エンジンの非効率などに触れて、或いは、GPSなどICT技術の更なる効率的な活用の必要性など、その不十分さにも言及しており、それ程、科学技術の未来を悲観しているようには思えないのが私には興味深い。
   そのためか、日経記事のタイトルは、Sustainable Humanityを、「発展持続への技術総動員」としているのだが、サックス教授は、最後に、持続可能な発展のためには、テクノロジーだけの問題ではなくて、さらに、市場のインセンティブ、政府のレギュレーション、R&Dへのパブリック・サポートの問題でもあり、政策やガバナンスよりももっと基本的なのは、(真の)価値への挑戦だと言う。
   そして、我々は、現在および将来のすべての人類に対して、運命を共有しているのだと言う認識を持って、社会正義への共通のコミットメントとして持続的発展を肝に銘じなければならないと結んでいる。
We must understand our shared fate, and embrace sustainable development as a common commitment to decency for all human beings, today and in the future.

   サックス教授の論点は、やはり、the challenge of values、最早、このままでは持続不可能となったグローバル経済にとっては、何が人類にとって一番大切か、その本質的に大切なvaluesを死守するために、唯一可能な手段として存在するテクノロジーのイノベーションの追及によって、持続可能な人類社会へのディベロップメントへチャレンジすることだと言うことであろう。
   そのvaluesの根幹をなすのが、運命共同体としての社会正義の実現、等しく生きる権利と尊厳をすべての人類が共有することが出来る社会であろう。

   アメリカの大統領選への予備選挙がたけなわだが、これだけ、貧困が深刻化し貧富の差が拡大して、アメリカンドリームが風前のともしびであるにも拘わらず、まだ、富裕層の富の拡大を図ろうとする候補者がいること自体が、驚きだが、あのシリアの惨状も堪えがたいが、今、この時点でも、どんどん餓死している人が居るアフリカや最貧国の現状を思えば、どこかで、先進国の成長を止めてでも、地球環境を死守すべき時期に来ていると言う気がしている。
   人類社会のサステイナブルと言えば、どうしても、資源の有限性や地球環境の方に視点が傾きがちだが、本当は、今、この宇宙船地球号上で運命を共にしている人々との真の共存共栄を、もっともっと考えなければならないのだろうとも思っている。
   私自身、経済発展論者ではあるが、本当に、人口がどんどん増えて行き、人々の生活が益々豊かになって行き、尚且つ、持続可能な地球環境を維持できるようなテクノロジーの進歩と経済発展があるのかどうか、日本社会もそうだが、世界全体の雲行きが益々風雲急を告げ始めて来ると、段々信じられなくなってくる。
コメント (1)
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