熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

EU各国で分離独立運動活発化

2012年10月16日 | 政治・経済・社会
   デービッド・キャメロン首相とスコットランド行政府のアレックス・サモンド首相は、15日、2014年にスコットランドの独立の是非を問う住民投票を行うことで合意し、独立が支持されれば、連合が成立してから300年を経て英国が分裂する可能性がある。と報じられている。
   一方、ベルギーでも、統一地方選が14日投開票され、北部オランダ語圏フラマン地域の「分離独立」を主張する中道右派の新フランドル同盟(N-VA)が大躍進し、アントワープを押さえ、ベルギーを現在のフラマンとフランス語圏ワロン地域の「連邦国家」から、双方の自治権を拡大した「国家連合」に改革した上で、フラマンの独立を達成しようとする動きが起こっていると言う。
   また、先日、このブログでも触れたが、スペインのカタロニアが、独立運動を加速化させ、独立に関する国民投票をスペイン政府が認めなければ、EU司法裁判所に提訴すると言う危機的な段階にまでエスカレートしている。

   これ等の地域は、昔から独立運動が盛んで、ことある毎に、独立運動が頭をもたげているのだが、その殆どは、政治や歴史、文化的な背景が要因となっているのだが、今回は、EU全般に広がっている経済危機が、その分離独立の重要な要因となっている。
   これらの地域は、夫々の国平均よりも経済的に豊かで、他の地域にその富の一部を提供しており、何故、自分たちがいつまでも、貧しい地域を自分たちが助けなければならないのかという不満が高揚していると言うのである。
   実際、スコットランドは、UK政府に入る北海油田の110億ユーロの収入を取り戻したいと思っており、カタロニアは、GDPの5分の1を占める所得を自分たちだけに使いたいと考えており、フラマン地方は、他地域を援助している60億ユーロを止めたいと思っているのだと、フランス2が報じている。

   これと全く同じことが、豊かなドイツ国民のギリシャなど経済危機に陥っている国を、何故、自分たちが犠牲を払ってまでして、助けなければならないのかと言う抵抗の原因でもあり、非常に難しい経済格差解消と言う問題の根源でもある。
   アメリカ大統領選挙の最も重要な争点の一つも、経済成長と雇用の問題ではあるのだが、弱者を優遇するのか、金持ちなど強者を優遇するのか、戦略の差が、経済格差の現実を如実に物語っている。

   これまで、何度も論じているので、蛇足だが、経済成長を実現できなければ、分配を出来るだけ公平にして、社会不安を押さえる以外には手段がなく、前述の分離独立運動についても、それが、自分たちの経済的豊かさや富を維持したいと言う思いが強力な要因として働いているのなら、そして、国家の維持が優先課題なら、分離独立は避けるべきであろう。
   難しいのは、この分離独立が、これまでの政治や文化など根深い歴史的な、或いは、民族や宗教的な原因に根差しており、無理に、統一国家なり連合を形成している場合で、本来維持していること自体が異常な場合で、これらは、当然万有引力の法則に従うべきであろう。

   EUの統合化が、どんどん、進行しているにも拘わらず、かってのネーション・ステーツが小さく分裂して行くと言うのは、逆行かも知れないが、しかし、政治的統合が進んで行って、各国家と言う政治経済単位の、独立性が希薄化して行き、EUへの依存なり帰属が進行して行けば、分離独立した不完全な政治経済体制でも、十分に生きて行くことが可能であり、それ程、深刻な問題は起こり得ないであろう。
   もう一つの利点は、今や、経済のグローバル化が常態となっているので、むしろ、経済活動は、イギリスやスペインなどのような比較的大きな経済単為よりも、もっと小さな経済単為の方が、自律性独立性を確保できて、効率的かつ有効だと考えられると言うことである。
    

   日本でも、最近、道州制の導入が視野に入り始めているのだが、地方への権限の委譲と同時に進めるべき問題で、あらゆる意味で、都道府県の垣根を排除して、政治経済単位を、最も機動性に富んだ、自由市場経済を最も有効に活用出来る体制に再構築することは必須であると考えられる。
   大阪都などと言う構想が現実化しつつあるが、最早、そんな程度の低い次元では、このグローバル時代の難局は乗り切って行ける筈もなく、九州など、独立国家のような状態に解き放せれば、アジアの経済的ハブとして、大変な発展が見込まれ得る筈である。
   東京が発展したのは、アメリカに門戸を開いた太平洋に面していたからだとするのなら、大躍進を遂げるアジアに最も近くて豊かな九州が、世界的な経済センターとしてのみならず、知的センターとして大躍進するのも夢ではなかろう。

   EU国家の分離独立の話が、脱線してしまったのだが、要するに、政治経済単位が、激動するグローバル時代においては、猫の目の様に大きく変革しており、これまでの国民国家意識に根差したものの考え方を維持し続けて、生きた組織対応が出来ないと、足をすくわれてしまって起き上がれなくなると言うことを言いたかったのである。
   脱線ついでに、終戦前には、北日本人民共和国と南日本民主主義国とに分断の恐怖も無きにしもの日本だったが、今や、衆参の国政選挙における一票の格差が5倍もあっても、政治家は政争に明け暮れて何のそので、国民は殆ど無関心で怒りさえ感じない国で、正に太平天国であるから、日本は、分離独立問題には最も縁の遠い国であろうことを付記しておきたい。
コメント
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