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一粒で二度おいしい運動会
2009-06-01
/
授業
昨日、非常に微妙な天候の中、運動会を無事に開催することが出来ました。
午後のスタートに雨が降ってきて、中断もあり、演技の変更もある中で最後まで開催できて良かったと思います。
私達が担当する高学年の子ども達も色々なことに頑張って活動していました。その中でも今回の組体操の取り組みについて総括しておきましょう。
公表できる限りの本音を書かせていただきます。
まずはじめに、学年スタート当初、組体操の指導は私が全部やるつもりでいました。スタートでつまづくわけにはいきませんし、組体操の練習を通して「井上イズム」の徹底を図れる。さらに子ども達の「組体操プロジェクトチーム」を早めに作って活動し、学年リーダー集団を育て上げる予定でした。
しかし、パートナーの若手・H.T教諭から、
「組体操の指導をやってみたいので、お願いします!」
という希望がありました。この「やる気」も捨てがたい。これから30年以上は教師をしていく20代前半の若手に力をつけてもらうことも私の大きな課題ではありますから。
そこで思い切って計画・指導を任せることにしました。
H.T教諭にとっては何もかもが初めてです。
経験がないので、どんな組体操にしたら良いのかイメージを持つことから挑戦でした。ゴールデンウイーク前には何とか指導計画が立っているようにしたいと思っていた私でしたが、さすがにそれは難しく、計画ができあがったのも練習を開始する直前でした。それでも初めて計画したにしては、よく考えられたものでした。
運動会の約2週間前から練習は始まりました。
この2週間の井上のテーマは「成長」の2文字。
(1)組体操練習を通して子ども達が自発的に取り組む気持ちを高めていくこと。
(2)若手H.T教諭が当日の成功という“見た目”にとらわれず、練習過程を通して子ども達を“育てる”という経験を積めること。
この2つか達成されるならば、自分は叱り役、嫌われ者になっても良いだろうと思っていました。
2週間の練習。短期間勝負。1回の練習が終わるたびに、井上からH.T教諭に言い聞かせてきたこと。
「いいかな、どんなに当日の演技がうまくできても、子ども達が“やらされている”状態だったら何の意味もない運動会になるよ。肝心なのは、この組体操の練習を通して子ども達の何を伸ばしていくのかということ。それは目的意識であり、自主性自発性であり、課題にチャレンジする態度であり、協力し励まし合う心地良さを感じることであり、たくさん育てられる。
そのために一番必要なのは、指導者であるH先生が一番成長しなくてはならないんだよ。」
「1回1回の練習に、しっかりゴール設定をして、見通しを持たせて練習しよう。そして指導者は1回の練習で本気で勝負するんだよ。」
「瞬間瞬間、すごく頑張っている子をキャッチして、大激励を入れていくんだ。その褒められている基準が子どもたちにモデルとなるから。」
「組体操の演技を終えた瞬間に、子ども達の表情が誇りに満ちていたら勝ちだ!」
他にも細かく細かく伝えてきました。それをしっかり受け止めて指導に当たったH.T教諭。彼は最後の練習で泣きそうになりながら語りました。
「先生は子どもの頃からサッカーをしてきたので、この10年間、5月にやっているヨーロッパチャンピオンズカップを見逃したことがなかったんだ。でも、今年は試合の放送をやっていること、完全に忘れていました。寝ても覚めても組体操のことを考えていたからです。ああ僕は、これほどまでに君たちの組体操を成功させてあげたいと思っていたんだとあらためて思いました。」
取りつくろうことなく、本音で語られたH.T教諭の言葉は子ども達の心を打ったのではないかと私は思っています。
さて、当日の演技については見てくださった皆さんの脳裏に焼き付いているでしょうからくわしく書かなくても良いですね。雨で一度中断した演技を、もう一度やらせてもらえたことは、子ども達の心に刻み込まれ、一生の思い出になったことでしょう。
運動会後の教員の打ち上げで、皆さんが語っていたことをご紹介しましょう。
「雨が降ってきて、最後の三段タワーを中止した時の子ども達の無念の表情が・・・これほどの思いで練習してきたことがよく分かりました。」
「6年生が、『もう一度やらせて下さい!』と必死に頼んできました。」
「2回目の演技に臨む時の、子ども達の真剣な姿に涙が出ました。」
「表情が素晴らしかった。演技の良し悪しではない。あの子ども達の表情は心の底から出てくる思いがないとできない表情だった。」
「会場の何とも言えない一体感。心に残る組体操を見せてもらった。」
私も、1回目の雨の中断をしたままで終わっては、子ども達の達成感がない、「必ず晴らす!」と念じました(笑)
これまでの自分の経験上、強烈な一念でけっこう天は動いてくれるわけで…
(笑…こんなこと言ったら危ないオカルト教師になってしまいますね…苦笑)
長くなりましたが、この文章の最後にまとめます。
会場にいるすべての方々の心に、5~6年生の姿をしっかり刻んでもらうため、そして子ども達のモチベーションをあげて集中させ、不注意のミスによる怪我を防ぐため、私が語ったマイクパフォーマンスを書き残しておきます。(記憶を頼りに書いたので、細かいところが違っているかもしれません)
「これから先ほど中断してしまった組体操の演技をもう一度やらせていただきます。私からは子ども達に『最後の三段タワーだけ、もう一度やらせてくれるように頼んであげるから』と言ったところ、『いいえ、お願いですからもう一度最初からやらせて下さい!』と必死に頼まれました。そうか、分かったと校長先生にお願いしたところ、ご理解いただき、もう一度最初から演技させてもらえることになりました。(会場から大きな拍手)
この日を迎えるまで、5~6年生は、練習を通して大きく成長してきました。本番の演技ではない、1回1回の練習で自分を鍛えて成長していく。その成長した姿を見てもらうために組体操をやるんだ。
6年生は学校の看板として最初の姿を見せるんだ、また、小学校最後の運動会なんだから、運動会の卒業式だ。立派に卒業するためにも組体操を成功させなくてはならないんだという気持ちでやってきました。
5年生は、高学年のスタートとして自覚を深めながら進んできました。
この子ども達の思いをぜひ分かっていただければと思います。
そして、この組体操を、ここ香取小学校の校庭に集ったすべての方々の思いを結集して演じ、今年の運動会のしめくくりとしていこうではありませんか。
どうぞよろしくお願い致します!!!」
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