さる土曜日、かねてから試運転中だった台湾新幹線 (台湾高鉄) の700T型が、営業運転時の最高速度となる300km/hによる試験運転を無事達成し、この10月からの営業運転開始に向け最終準備段階に突入したようです。李前総統のツルの一声で車両が欧州式から日本式へと変更になった台湾新幹線も、信号システムは欧州式のチャンポンとなり、さらには工期・納期や債務をめぐって日本のメーカーとの間に悶着が起こったりするなど、外国で初めてとなる日本新幹線車両の運行は決して平坦な道程ではなかったのですが、ついに開業するんですねぇ……。
台湾の次は、台湾に負けじと中国がJREのE2系を数編成こっそりと輸入して性能試験を行い (中国政府は反日ナショナリストの猛烈な非難を深く恐れたものの、いざ正式購入が明らかになれば誰も文句を言わなくなったのがミソ)、さらにJRE・日本側メーカーからライセンスを受けたコピーを青島の車両工場で大量に製造のうえ、秋から華北~華中の在来線を中心に200km/h運行を始めるようですが、果てさてどうなりますことやら (汗)。
それはさておき、そんな感じで台湾新幹線が走り始めるとなれば、当然割を食うのは在来線の列車……。そこで台湾鉄路局は、新幹線の脅威への対抗策として、短距離~中距離の都市間連絡輸送・近郊輸送に特化する方針を掲げたようです。そして、従来は運賃体系が
◆「自強」……欧州・南ア製電車特急 (釣掛 *^^*)
韓国製PP式電気機関車&客車の特急
日本製DCの特急
◆「キョ光 (キョ=くさかんむり+呂)」……オレンジの客車特急
◆「復興」……水色の客車急行
冷房つき通勤電車 (南アフリカ製は釣掛! 韓国製はVVVF)
支線の冷房つきDC
◆「普通」……客車鈍行及び非冷房DC
の4カテゴリーに分かれていたのを大幅に整理し、来年客車特急「キョ光」を、そして2011年までに客車急行「復興」を全廃のうえ、「自強」と「電車 (支線の冷房つきDCを含む)」のみとするとか……。
そのため、これまで台湾鉄道の旅においてのんびりと贅沢な時間を提供してくれていたキョ光号を楽しむことが出来るのも、あと僅かとなってしまいました……(T_T)。台湾鉄の悦楽をすでにご存じの方も、興味は何となくあるけどまだ未訪問という方も、乗って撮るのは早め早めが良さそうです (-_-)。
特に、海あり山ありの絶景が展開する東部幹線~花東線の旅において、サロ165並みの深々とゆったりとした座り心地を誇り、かつドアを走行中も手動で開閉できるキョ光号は、何度乗っても感動的……(*^^*)。
しかし先日ついに、3000m級の高山をブチ抜いた台北~宜蘭間の高速道路が完成し、従来台鉄のドル箱だったこの区間の地位が揺らいでしまった結果、台鉄としては瑞芳~福隆間の極めて線形が悪い区間でノロノロ運転しか出来ない客車特急を一刻も早く追放し、間もなく登場する883系「太魯閣 (タロコ) 号」(運賃は自強号と同じはず) に置き換えてしまいたい意向のようです。
それゆえ、今までは結構な本数が走っていた東部幹線のキョ光号も、消え始めたら一気に消えてしまうのかも知れない……という危機感を抱いています。この冬から来年の春あたり、また行けないものかと思案中……。(↑は花東線・玉里にて)
いっぽう、キョ光号に使われる客車には、ここ10年ほどのあいだに製造され、やや座り心地の落ちる椅子と少々安っぽい内装、そして緑がかった窓ガラスに自動ドア装備の車両もあります (↑の画像。高雄駅にて)。これらは基本的に、韓国製のプッシュプル自強 (故障続発中 -_-) に準じたショボさだなぁ……と思っていたのですが、製造されてからまだ日が浅いことから、手動ドアの客車とは運命をともにせず、何と自強号へと格上げされるようです。スピードが遅く、スペックが安っぽいのに自強号とは一体……(-_-)。
まあ、それでも1067mmゲージの客車特急を楽しみたいと思ったら、何だかんだ言って乗ってしまいそうですが……(^^;;
何はともあれ、台湾鉄道事情の激変によって、主力の座から一気に転落することになってしまったキョ光号。70年代に超高級豪華列車として登場したのも今は昔、台湾の経済発展によって運賃は誰にでも払えるものになったものの、その安くて快適な乗り心地、観光ビジネスから通勤通学までカバーした幅広い活躍 (全ての車種に乗れる「通用定期券」なるものが存在し、登下校の高校生が当然のようにドヤドヤと乗ってきます ^^;) などなど……台湾人はもとより、台湾を訪れる日本人乗り鉄にも広く愛された列車だったと思いますが、今後はその列車名を懐かしさとともに語るのはさておき、現実に走る列車の名前として維持するべきだと思う人はほとんど誰もいないものと思われます。
何故なら、「キョ (くさかんむり+呂)」という字は、いわゆる春秋戦国時代の大陸で四方を敵に囲まれてしまった国のことで、列車名そのものが「いつか国際的な苦境を打開して中国大陸を取り返してやる~」という蒋介石と国民党の空しい意地そのものだったからです。ですが「今さら中国との統一なんて冗談じゃない」と思っている圧倒的多数の台湾の人々からみて、こんな表現は最早タダの勘違い以外の何者でもないのでしょう。それよりは、台湾の先住民族エリアにある奇勝・タロコ峡谷の名前を冠した最新鋭電車の方が、余程台湾の鉄道新時代を象徴するはずだ……と思っているのかも知れません。