地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

タキの楽園・根岸製油所の閉鎖計画浮上

2010-10-07 00:00:00 | 貨物列車 (臨海・専用線)


 昨日の午後、仕事をしながらチラリと『読売新聞』Webサイトをチェックしていたところ、心の底から激しい驚きと動揺がこみ上げて来ざるを得ない記事が……。今年に入って新日本石油と新日鉱ホールディングスが合併することで設立されたJXホールデングスは、日本国内最大級の石油精製能力を誇る根岸製油所を2020年までに閉鎖することを検討しているとのこと……。景気の低迷・省エネ技術の進展・化石燃料に代替するエネルギーの開発といった要因が、各地に散らばる製油所の閉鎖につながっていることは周知の通りですが、根岸にはいわば「規模の経済」で様々な部門を集約し、最新鋭の技術で効率良く大量生産を行っているものと素人目には見え、少なくとも根岸は将来にわたって日本の石油生産の一大総本山として君臨し続けるものとばかり思っていましたので、まさに寝耳に水です……。



 そして鉄道趣味者として当然のように真っ先に思い浮かべるのは、もし本当に閉鎖ということになった場合には膨大な発着量を誇る根岸線タキが全て消えてしまうのだろうか……ということ。古参のD504 (今回の画像) やNDD56といったスイッチャーが休みなく動き回り、ELに牽引された長大タキ編成が入れ替わり立ち替わり発着し、構内が無数のタキ1000・43000で埋め尽くされているという光景は、まさに工業国家日本を象徴する光景であるはずです。そして私の場合、親戚が根岸駅のすぐそばに住んでいることから、幼少時には親戚を訪ねるたびに線路脇の公園のジャングルジムにかじりつき、EF15が率いる黒タキの発着シーンを飽くことなく眺め続け……。根岸は私にとってまさに、鉄道趣味のかけがえのない原点のひとつです。それがなくなるかも知れないということは、単に「諸行無常」を痛感させるような原風景の消失を意味するのみならず、化石燃料に支えられた工業国家としての日本の近代がこれで完全に終わり行くことを意味しているのだろうか、と思います。
 もちろん、まだ決まった話ではありませんし、もしなくなるとしても今すぐの話でもないでしょうから、慌てて根岸線や高島貨物線のタキを撮る必要もないのでしょう。とはいえ……これは鉄道貨物界&趣味界を震撼させる話題であることは間違いないはず。かりに全ての施設が撤去されたあとには何を作るのか、ということも将来的には問題になるのでしょうが、超大型タンカーが停泊可能な条件を活かし、釜山にタメを張れる一大コンテナ港を建設するのか(鉄道をコンテナバースまでダイレクトに乗り入れ可とすればなお良し、でしょうか)、それとも最先端工業の誘致か、一大マンション開発か、砂浜の復活か……。鶴見線沿線が産業空洞化気味であることも含めて、京浜工業地帯の大幅なリニューアルを国策として推進する時期にさしかかっている、ということなのかも知れません (もしそうだとしてもM主党がそれを真面目にやるとはとても思えないのですが --;)。

【10.8注記】『日本経済新聞』朝刊に載っていたJXホールディングスへのインタビュー記事によりますと、減産計画はあるものの、首都圏に石油を供給する拠点である根岸を閉鎖することは全く考えていないとのこと。まぁそりゃそうだよな……と思いたいところですが、果たして今後は?