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ミステリ感想-『永遠の殺人者』小島正樹

2013年12月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
空き家の浴槽で発見された死体は両手首を切断され、血だまりに浸かっていた。
そして左手首は封印されたコンテナから、右手首は家の壁の中から見つかるも、コンテナと壁の中に両手首が入れられたと思われる時間より後に、五体満足な被害者の姿が目撃されていた。
事件は連続殺人へと発展する中、県警は伝説的な名刑事を内助の功で支えた賢妻・城沢薫に捜査を依頼。孫に背負われ駆けつけたおんぶ探偵が謎に挑む。


~感想~
やりすぎコージー(勝手に命名)今回も激しくやりすぎる。
ページを埋め尽くすように謎と推理とトリックを詰め込む作風で知られる作者だが、今回は事件だけに留まらず設定も激しく盛ってきた。
2013年の小島正樹は探偵役を始めとするキャラの弱さを克服するために(?)これまでのシリーズを離れた作品を出しているが、おんぶ探偵・城沢薫は普通に推理するだけに飽きたらず、亡夫の霊と交信するわ、彼女をおぶる孫の山男は、もう山男というか仙人のような超常能力を次々と発揮し、最終的にはなぜか山男とも仙人とも関係ない心理試験まで仕掛けるわ、脇を固める堅物刑事は空気を読まずにストロングスタイルのツンを連発したと思いきや肝心な時にデレるどころかヘタレるわ――と主要キャラが語り手を除いてとにかく濃いい。
キャラをそこまで盛ってきて、では事件はどうかといえば、上記のあらすじの数倍の謎と事件がこれでもかと詰め込まれ、不可能状況のいくつかは残念なトリックで片付けられるものの、島田荘司というか霞流一に捧げるような死体ゴラスイッチから密室が生まれ、どんでん返しにどんでん返しを重ねた結果、小島作品史上最凶クラスの真犯人の狡知な策謀が暴かれる、いつもながらの――と言ってしまえることが実に恐ろしいのだがやはりいつもながらの――小島正樹らしいやりすぎミステリである。
執筆ペースから見てここまでやりすぎられるのは年に一作が限界だろうが、氏には毎年このくらいやりすぎてもらいたいものだ。
それにしても本当に不思議なのだがどうして評価されないんだろか。


13.12.4
評価:★★★★ 8
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