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ミステリ感想-『ある閉ざされた雪の山荘で』東野圭吾

2015年03月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
役作りのためペンションに集められた7人の劇団員。
雪に閉ざされた山荘という設定で共同生活を始め、被害者役が一人、二人と消えていく。
だがやがて彼らは、これは本当に芝居なのかと疑問を抱きだす。

93年 日本推理作家協会賞・候補


~感想~
雪に閉ざされた山荘でドロドロした人間関係から連続殺人が始まる……と起きている事象だけ見ればベッタベタな設定だが「※ただし芝居である」と但し書きが付き、そのうえ「※ただし芝居とは限らない」と二重に縛られた非常にひねくれた作品である。
設定だけでもう十分に面白いが、終わってみれば意表をつくトリックに加えある趣向が凝らされ、さらにひねりを足しており、並の作家なら錯綜してしまいそうなところを、持ち前の平易な文章と徹底されたフェアプレイできわめて読みやすく仕上げているのはさすが東野圭吾である。
作者の代表作とまでは言わないが、良作の一つに挙げられるだろう。

なお文庫版解説の法月綸太郎は、本作のネタバレ前に注意はしてくれるものの、ついでに予告なく他の東野作品のトリックの種類を次々と割っているので要注意。
また全くの余談ながらP32の12行目とP38の1行目は明らかに矛盾しているのだが、ただの見落としだろうか。


15.3.10
評価:★★★☆ 7
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