小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『裁判員法廷』芦辺拓

2015年03月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
2009年、ついに始まった裁判員制度。
指一本触れていないのに血まみれで死んだ被害者。提出できなかった決定的証拠を評議して欲しいと訴える弁護士。有罪を高らかに主張する被告。
裁判員に選出された「あなた」達は3つの法廷に臨む。

08年本ミス6位、本格ミステリ大賞・候補


~感想~
裁判員制度の施行前に架空の陪審法を題材にした「十三番目の陪審員」に続き、今度は本当に裁判員制度を題材にした連作短編集。
大仰な癖のある文体で読みづらいことの多々ある作者だが、「あなた」に呼びかける二人称のおかげで今回はきわめて読みやすいのはいいところ。
だが各短編にそれぞれ欠点が見え、まず「審理」は傑作ゲーム「逆転裁判」の一エピソードの範疇を出ず、「評議」は弁護士・森江春策の「提出できなかった決定的証拠を評議して欲しい」という無茶ぶりは面白いが、「だが裁判はあくまでも提出された証拠だけで戦うものなのでは?」という疑問が最後まで付きまとい、どうして裁判官の誰も気づかなかったのか不自然なほどわかりやすい暗号もあんまり。
「自白」では大胆な罠が待ち受けているものの、事件の様相はヒントを出しすぎてほとんどバレバレ状態。
本ミス6位とあってこちらに期待しすぎた感もあるし、単純に作者との相性が良くないだけだが、それにしても物足りなかった。

まったくの余談ながら1話目では被告がネクタイとベルトを締めることを認められているのに、2話目では自殺の恐れがあるためベルトは認められていないと真逆の描写をされているのだが、2つの事件の間に法改正でもあったのだろうか。


15.3.16
評価:★★☆ 5
コメント