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ミステリ感想-『犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題』法月綸太郎

2015年08月09日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
自宅で溺死した女と帰宅中に絞殺された男。接点のないはずの2つの現場には「正義」のタロットカードが置かれていた……宿命の交わる城で
解散した3人組アイドルのファンクラブ会長が事務所の元社長を殺害。事件の黒幕はアイドル3人の中に?……三人の女神の問題
ストーカーの女を殺した疑いを持たれた獣医師。綸太郎は彼女が名乗っていた偽名に着目し……オーキュロエの死
自宅で監禁され衰弱死した音楽評論家は、山羊座のシンボルに見えるダイイング・メッセージを残していた……錯乱のシランクス
経営コンサルタントの母に頼まれ、大金を男に手渡した息子。男は息子の身代金だと言うが、他に兄弟はいないはず……ガニュメデスの骸
幼くして亡くした息子の生まれ変わりを探す女社長。彼女を操る霊能者は三人の候補を探し当て……引き裂かれた双魚


~感想~
黄道12宮を題材にした短編集で前作から実に5年ぶりの続編。5年間で短編6本という法月らしい刊行ペースながら、質も法月らしい粒ぞろいである。
当たり外れのないどれも良質の本格短編で好みは人それぞれだろうが、一編挙げるなら「三人の女神の問題」が神話とストーリーがぴたりと嵌まり、作者も自画自賛の出来栄え。
犯人はモロバレながら神話とのつながりが最も深い「錯乱のシランクス」や、法月探偵が京極堂ばりの憑物落としを見せる「引き裂かれた双魚」、長編「キングを探せ」との照応が面白い「宿命の交わる城で」に、法月探偵がピンと来るシーンがさっぱり要領を得ないが盲点から犯人が浮かび上がる「オーキュロエの死」、魅力的な謎が納得の着地を見せる「ガニュメデスの骸」と何度も言うがいずれ劣らぬ良作揃いで、待たせただけはある。

これだけ意味ありげに12宮に沿って(それもおそらく順番通りに)事件が起こっているのに、その恐るべき偶然を作中では全く問題にしないのは明らかに手落ちだと思うが、変わらぬ法月作品の安定感にはいたって満足した。


15.8.2 再読
評価:★★★☆ 7
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