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ミステリ感想-『顔のない肖像画』連城三紀彦

2015年08月24日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
強姦で医師を訴える患者と冤罪だと主張する医師。カーテンの閉ざされた病室で何があったのか?……瀆された目
地味を装った美しい患者に私は治療を施す……美しい針
運転手は私を連続タクシー強盗だと誤解している。間の悪いことに私の衣服には血が付いていて……路上の闇
誘拐されていると通報してきた少年は、9年前に誘拐殺人で命を落としていた……ぼくを見つけて
不倫相手を殺した直後、その妻から死体を発見したと連絡が。妻の目を欺けるのか……夜のもうひとつの顔
上司の妻は同僚の中に夫の浮気相手がいると語る。内偵を進めるが全員が疑わしく……孤独な関係
悲運の画家の遺作を金に糸目をつけず競り落としてくれと頼む妻。だが彼女には財産は無いはずで……顔のない肖像画


~感想~
恋愛小説でありながらミステリとしても一流という連城作品の中でも、本書は恋愛にこだわらずミステリとしての色濃い作品が揃った。
証言だけで話を進めたった32ページで目まぐるしい反転を見せる「瀆された目」、誘拐ミステリの傑作をいくつもものしてきた作者がまだまだ見せる誘拐の手練手管「ぼくを見つけて」、倒叙形式ながらそれだけに終わらない思わぬ展開を見せる「夜のもうひとつの顔」、これも連城名物の一人語りで激しいどんでん返しを繰り返す「孤独な関係」と秀作があるわあるわ。
しかしなんといっても白眉は表題作で、悲運の画家と怪しい妻、いくつもの不審な点を残しながら進むオークション、そして明かされる絶対に予測不可能な真相と、余裕で長編に出来る物語を惜しげもなく短編に仕上げた傑作である。
本当に連城はいくつ代表作の候補を書けば気が済むのだろうか。

なお文庫版の解説はなんら予告もなしに「戻り川心中」や「恋文」のネタバレをかます糞解説なので迷わず破り捨てることをおすすめしたい。


15.8.24
評価:★★★★ 8
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